miwasan0216’s blog

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【第183回国会】参議院外交防衛委員会 第4号 平成25年5月21日

参議院外交防衛委員会

共同親権」を取り上げた国会会議録を読んでみました。

 

登場人物:末松信介 参議院議員自民党

     平松賢司 外務省総合外交政策局長

     岸田文雄 外務大臣

 

○末松信介君 新しく当選された江島さんという議員と話していたら、地方議会でもやはり休憩取るんですよね。私は、議運の場でまた改めてそういった議論をしたいと思います。横道にそれました。
 ハーグ条約の子奪取案が質疑されて、本日採決ということになったわけでありますけれども、代表的な事件であるサボイ事件、これはもう大臣もよく御存じのとおりでありますけれども、米国では元妻による拉致事件、国外移送、これ略取事件ということで地元警察も元妻の逮捕状を取ったと。今度は、奪い返そうとしたこの子のお父さんが福岡県の方で未成年者略取の容疑で逮捕されるという、これ大変つらい話であったと思うんですけれども、こうした問題が解決できればなということを思うんですけれども。
 今年の二月の日米首脳会談で安倍総理も、このハーグ子奪取条約については加盟をしたいということをオバマ大統領に約束をされたわけでありまして、我々も大きな期待を寄せているところでございます。今G8で、この主要八か国で加入していないのは日本だけになってしまったということでございます。
 それで、私、要望なんですけれども、これは過去、ほかの先生方も御質問されたと思います。TPPとかRCEPとかFTAAP、非常にアジアとのかかわり合いが深くなってくると。アジアとのかかわり合いが深くなるということはアジアの女性との国際結婚も増える。結婚が増えるということは離婚も増えるということなんですけれども。特に日本人男性は中国とフィリピンの女性で七割近い方々が結婚されておると。そして、離婚も七割は中国とフィリピンの方であると。だから、こうした国々、方々が、当然フィリピン、中国がハーグ条約に加盟をしてもらわないと、今後を見通した場合には私は大きな意義を見出せないと思うので、その努力を是非お願いをしたいということを思います。
 この法案の中身はもうあえて申し上げませんけれども、欧米では共同親権が一応一つの理論になっています。日本では単独親権ということでありますから、日本では子供を一旦手放したら二度と会えないという、そういう考え方が大変強かったと思うんですけれども、日本は独自の家庭観と、これは文化のそういった意識があろうかと思うんですけれども。それで、欧米の価値観を基準としたこのハーグ条約とは相入れないんじゃないかという、そういうことをおっしゃる方も多いわけなんですけれども、この点について一体どうこたえていくのかということにつきまして、大臣の考え方を伺います。

国務大臣岸田文雄君) まず、国境を越えた人の往来が飛躍的に増加し、そして日本人の国際結婚及びその破綻も増加しております。こうしたことから、諸外国との間で子の連れ去り等をめぐる問題、顕在化しております。そうした中で、我が国だけG8諸国の中でハーグ条約締結しないという状況にあるわけですが、国境を越えた不法な子の連れ去りによる一番の被害者は子供自身であり、子の利益を保護するという見地からも、ハーグ条約を早期に締結すること、極めて重要だと考えております。
 そして、先ほどアジア諸国との関係を御指摘がありました。こうしたハーグ条約ですが、子の利益を保護するためにはやはり国際的なネットワークをしっかりと構築するということ、これが大変重要であります。アジア諸国においてはまだこのハーグ条約締結していない国がかなり多いわけですが、こうしたネットワーク構築ということを考えますときに、我が国としては、今後、子の連れ去り等をめぐる問題が生じる可能性が潜在的に高いと考えられるアジアの国々、こうした国々に対してしっかりと締結の重要性について協議を行っていく、働きかけを行っていく、こういった点は重要だと存じます。
 そして、あわせて、価値観の違いについて御指摘をいただきました。今申し上げましたように、ハーグ条約自体は子の利益を保護するという見地に立っております。このハーグ条約というのは、一方の親の都合によって不法に子が連れ去られることは、ある日突然に生活基盤が崩れ、他方の親との接触が切断され、異なる言語、異なる文化環境での生活を余儀なくされるといった有害な影響を子に与えるという認識に立っております。
 ですから、特定の国や地域の習慣とか文化あるいは価値観に立脚するものではないと考えられます。こうしたことですので、こうした考え方自身は国際社会で共有されていると考えております。よって、我が国の習慣、文化、価値観等になじまないということになるのではないかという心配は当たらないのではないかと考えます。

⇒岸田外務大臣(現・総理大臣)、よく理解されている。日本の共同親権制度の導入についても、強いリーダーシップを発揮していただきたい。

 

○末松信介君 調査室からいただいた資料では、条約に締結すべき意見例として積極的な意見と慎重な意見があって、そういう書き方をすると。日本人、そういう分析の仕方をよくするわけなんですけれども、今の大臣のお話は一応理解はしました。
 それで、二〇一一年の五月に、民法中の七百六十六条に離婚後の父母の面会交流は規定がされております、これにつきましては。それまでも、家庭裁判所も、実務で面会交流、子の監護に関する処分に位置付けましてこれを認めてきた実は経緯があるわけなんですよね。ある面では日本も共同親権的な思想は少し入ってきているということは確かなんですよ。だって、私の知り合いの子供さんが離婚しましたけれども、やっぱり、夏休みの間、何日か会って生活をしなさいと、それで、何週間に一回は必ず会いなさいということが協議離婚の中で条件がうたわれている、そういう話を私も聞いているわけなんですけれども。
 それで、いずれこのハーグ条約に加盟するということは、共同親権の問題とは一旦向き合う時期がやってくるんじゃないかという、そういうことを私は個人的には思っているんです。どうなるか分かりませんが。それで、他方、見方としては、離婚後、共同親権を認めるならば、これは簡単に離婚に踏み切ることはないという考え方もあることは確かなんですよね。異なった二つの見方が、確かにそのことが言われております。
 そのことは横に置いておきましても、私は慎重な意見の中で一番気になることを申し上げたいと思うんですが、先ほど風間委員も指摘をされました。それはどういうことかといいましたら、家庭内の暴力があって、ひどく命に危険があるということですね。そういったDV被害に遭っている方にとっては、もう時間の掛かる保護手続を待っていたら我が身が危ないと。とにかくその危険から自分の身を守らなきゃならないという、そのことで母国に帰ってきていると。子供は海外に置いておくわけにはいかないので連れて帰ってくるという、ある面でこれは言わば緊急避難的なやむを得ざる措置だと思うんですよね。
 それを簡単に、このハーグ条約ということで、まあ原則としては元の居住地国に戻さなきゃならぬわけですけれども、戻っているわけなんですけれども、割り切れるということ、簡単に割り切っていいのかどうかということ、見解の相違であるということで割り切っていいのか、私は少し考える余地がまだあるのかなということを思うんですけれども、岸田大臣の御見解を伺いたいと思います。担当局長でも結構ですよ。

 

○政府参考人(平松賢司君) お答え申し上げます。
 確かに、いわゆる家庭内暴力の件というのは非常に重要な問題だと承知しております。確かに、いわゆる自力救済と申しますか、やむを得ない事情の下に子供を連れ帰るという事態もあろうかと思いますけれども、もしそれが相手の親の監護の権利を侵害するというふうな形で行われる場合は、それはハーグ条約上の不法な連れ去りということにならざるを得ません。
 他方、事案によっては、今委員の御指摘のとおり、DV被害等によりやむを得ず我が国に子を連れ帰るという場合も確かにあろうかと思います。この場合は、相手国の相手の親の監護の権利を侵害したということであれば確かに不法な連れ去りには該当いたしますけれども、この中で、これも条約あるいは法律の中で定められておりますけれども、返還拒否事由というのがございます。それに認められると、そういう返還拒否事由であるということを認定されれば子を返還する義務はございません。
 条約実施法案におきましても、DV被害によりやむを得ず子を連れ帰ったというケースに関連いたしまして、かかる拒否事由の存否を判断する上で考慮すべき事由が規定されておりまして、こういった事由に基づきまして我が国の裁判手続においてこれが適切に配慮されるということになると思います。

⇒DV事案の場合、ハーグ条約では「返還拒否事由」がある。

 

○末松信介君 局長のおっしゃることは分かるんです。しかし、立証事由も当然、子供を連れてきた母が自分でこれ立証しなきゃいかぬわけですよね、こういうことがあったと。場合によっては、外国において日本のそういった大使館なりにも一応こういうことがありますということを伝達していくということで、極めて難しい作業をやっぱり求められているということは確かだと思うんです。
 それと、このハーグ子奪取条約が成立したときには、DVというのは余り想定されていなかったはずなんですよ。と同時に、子供を連れ去るのは父親であって、母親が連れ去るケースというのは余り想定されていなかったということはいろんな文献から明らかになっているわけなんで、そういう点も、私は、少しこのハーグ条約ということについては引き続きしっかり注視をしていくと、この条約加盟しましても、そのことを強く求めておきたいと思うんです。
 与えられた時間が大変短いので次に進みますけれども、この子の連れ去り問題にはいろんなケースがございます。これは調査室にいただいた資料、加地君が作ってくれた資料も見たら大変詳しく出ておるわけなんですけれども、私は、代表的な話を言いましたら、一昨年の原発事故を理由に、日本人と結婚した外国人が子供を連れて母国に帰るケースが出始めておるということなんです。日本は子供を連れ戻すのに有効なハーグ条約に加盟していないため、子供を奪われて途方に暮れている親がおられます。アメリカ人と結婚したある日本人の女性の話なんです。
 一昨年の三月に、夫が子供を連れて一か月の予定でアメリカへ里帰りしたと。その間に福島の原発の事故が起きてしまったと。それで、夫は原発事故の影響を恐れて、いまだアメリカを離れようとしていないんです。女性は帰国を促すと、子供を放射能の危険にさらすのかと拒んだそうなんです。アメリカでは、震災後、津波放射能のことが連日報道され続けました。夫は当初、原発の事故が安定したら戻ると約束していたんですけれども、その約束が守られることなく、昨年の十一月に一方的にアメリカで離婚を求める訴訟を起こされてしまったそうです。あの東日本大震災がなければ、今ごろは家族そろって幸せに暮らしていることだと思うんです。
 それで、女性はアメリカで安定した職を見付けられる保証はなくて、この状態で離婚となれば親権が認められる可能性も低いということを考えておられます。アメリカ政府の子供連れ去り窓口に相談しましても、日本はハーグ条約に加盟していません、子供を元の居住地に戻す義務はない、子供は保護の対象になりませんと。それと、アメリカで訴訟した場合、これもう何百万円という訴訟費用が掛かるということが一般的に言われております。それと同時に、ハーグ条約に加盟しましても、過去の事例には遡及されないということが明記されていますよね、条文にも書いているということなんですよ。
 それで、この女性は泣き寝入りをしたままなんですけれども、こういう連れ去り問題に対処できないのかどうかと。これはやはり、こういった問題をどう解決していくかということを、政府はすき間の問題をきちっとどう対処するかということを考えておかなければ、私は、ハーグ条約に加盟した加盟したということで手放しで喜べないと思うんですよ。
 ですから、この場合、二国間協定を結ぶとか、あるいは欧州評議会でも、こうした評議会をつくって話合いのできる場なんかを設けているはずなんですよ。多少私もこの関係する本を読みましたけど、そういうことを日本政府は考えていないのかどうか。このケースを想定して、この問題を解決するために日本政府は何ができるかということをお答えいただきたいと思うんです。担当の局長で結構です。

○政府参考人(平松賢司君) お答えいたします。
 委員御指摘のとおり、ハーグ条約の効力発生前においては、あるいは子の不法な連れ去り、留置に対しては条約の適用がないというのは御指摘のとおりでございます。したがいまして、今ある案件、既存案件についてハーグ条約をそのまま適用することはできないということは御理解いただきたいと思いますが、確かに今委員御指摘のように、いろいろ難しい案件、気の毒な案件があるということは我々十分把握あるいは認識しておりますので、そういったものについてもこれからも丁寧な対応をしていかなきゃいけないというふうに考えております。政府としても、これまでの国内法令等に従いまして、できるだけ可能な範囲で支援を行っていくということを考えております。
 今御指摘がございましたようなことで、例えば情報共有を目的とする二国間の連絡協議会というものも既にございますし、そういったものを通じた対応をする、あるいは、現行の制度、それぞれ国によってございますので、そういった制度を活用する、あるいは、親と子が会えない場合に領事が子と面会し、状況を確認する領事面会というのを外務省として支援するなど、いろんな可能な支援をやっていきたいというふうに思っております。
 今御指摘がございました二国間条約の締結でございますけれども、これは、主要国の例におきましても、二国間条約の締結によってハーグ条約の効力発生前の案件を処理するという例はございません。したがいまして、今のところ、今のような御指摘の遡及適用を認める二国間条約の締結ということは考えておりませんけれども、今私が申し上げたような幾つかの手段を通じまして、できるだけきめ細かい対応をしたいと思っております。
 更に申し上げれば、ハーグ条約発効前に発生した連れ去り事案に関しましても、いわゆる面会交流の権利が侵害されたという場合は、面会交流に関してハーグ条約に基づく支援を受けることは可能でございますので、そういった面会交流という手段を通じても、今ある案件についてできる限りの手当てをするということは可能ではないかというふうに考えてございます。

○末松信介君 一応、新たな制度設計をしなくても、既存の仕組みを使って丁寧に対応していって困った人を助けてあげると、こういうケースもそういう努力をしたいということだと思うんですけれども、私は代表的な事件としてこの問題を取り上げただけなんですけれども、もうこれ以上はお話し申し上げませんけれども、欧州評議会では、子の監護及び子の監護の回復に関する決定の承認及び執行に関する欧州条約ということで、締約国三十七か国が加入されているんですけれども、ここでもってもこうした問題は解決されるというか、ここの条約でもって解決されるわけじゃないんですね、それじゃ。ちょっと確認をさせてください。

○政府参考人(平松賢司君) あくまでも子の連れ去り事案につきましては国際的な約束としてハーグ条約がございますので、あくまでもハーグ条約の枠内で何ができるかということが国際的なルールではございます。
 他方、それぞれの個別案件について、それぞれの国ができるだけ丁寧な対応をするということは当然あろうかと思いますので、今私が申し上げたような形で、既存のいろんな仕組みを使いながらできるだけ丁寧に対応するということは今後とも努めてまいりたいというふうに考えております。

東日本大震災の時に、深刻な問題が起きていたことは知らなかった。ハーグ条約は加盟以前の事件に対して遡及適用できないが、政府は「きめ細かい対応をしたい」と答弁している。