miwasan0216’s blog

愛する子供たちのために、理不尽さと闘う父。誰もが幸福な世の中になるために。

【第183回国会】衆議院本会議 第14号 平成25年4月4日

衆議院本会議

共同親権」を取り上げた国会会議録を読んでみました。


登場人物:三谷英弘 衆議院議員みんなの党

     岸田文雄 外務大臣

     谷垣禎一 法務大臣

 

三谷英弘君 みんなの党三谷英弘です。
 国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約、いわゆるハーグ条約の締結について承認を求めるの件等について、みんなの党を代表して質問いたします。(拍手)
 子供の連れ去り案件というのは、国内、国外を問わず数多く発生していることは周知の事実です。
 私自身も、弁護士として仕事をする中で、突然子供を連れ去られてしまい、本当につらい思いをしている方にお会いしたことがあります。また、一方的に連れ去られ、もう永遠に会えない、このつらさから、自分で命を絶つ決断をされる方すらいるという話を伺ったこともあります。自分の子供に会えなくなる状況というのは、私も二人の娘を育てる立場ですから、想像するに余りあります。
 一九八〇年にハーグ条約が成立し、既に世界で八十九カ国が締結済み。世界の主要国であるG8諸国の中でも、未締結の国は日本だけ。子供の連れ去り問題の取り組みにおいては、非常に世界から取り残された状況です。この状況を改善する上で、日本がハーグ条約を締結することは、非常に大きな一歩です。
 しかしながら、その一方で、やむにやまれぬ事情から、子供を連れて日本に戻ってくるという決断を迫られた方も少なくありません。子供のためを思えばこそ、そのような決断をした方々の思いを理解することも、また重要です。
 この問題は、その両者の思いをしっかりと受けとめていくことが大切ですが、子供の奪い合いという不幸な結果を避けるためにも、いかに処遇することが子の福祉に最も合致するのかという観点、これをしっかりと持つことが最も重要であると考えます。
 ハーグ条約の前文にも、「子の監護に関する事項において子の利益が最も重要である」と明記されているところではありますが、ハーグ条約においては、子の福祉という観点が中心に据えられているのかについて、まず伺いたいと思います。
 また、ハーグ条約を締結したとしても、それで全て問題が解決するわけではありません。
 まず、近時、国際結婚の数が増加するにつれ、アジア諸国との間で国際的な子供連れ去り事案の件数は増加しています。しかしながら、アジア諸国の中でハーグ条約を締結しているのは、わずか四カ国。ハーグ条約未締結国との間で子供の連れ去り事案が起きることも数多く想定されます。その場合に備えて、政府として何らかの対応策を講じていらっしゃるのでしょうか。
 また、日本において共同親権が認められていないことから生じる問題もあります。
 例えば、アメリカでは共同親権が認められているため、アメリカから無断で子供を連れ去ってきたときには、アメリカの共同親権者から容易に子供の連れ戻しというものを求められてしまいます。これに対して、今の日本の制度では、離婚後に無断でアメリカに子供が連れ去られてしまったときは、日本に残された親は、何の権利もなく、子供を取り戻せない、そして会えないという結果になりかねません。
 このような片務的な結果を認めていくのか否か、これはまさしく共同親権を認めるか否かにかかわってくる問題ですが、この問題についての見解を伺います。
 他方で、子の福祉という観点からは、ただ単に子を戻せばよいということではありません。ハーグ条約十三条において返還拒否事由が規定されていますが、具体的に、どのような場合に返さなくてもよいのか、しっかりと定めていくことが重要です。
 この点、いわゆるDVの被害が子に生じている場合に返還拒否するのは当然のこと、配偶者に被害が生じている場合でも、そのような家庭内で子供を育てることは、それだけで児童虐待とも言い得る状況なのであって、そのような家庭に子供を戻すべきか否か、これを考えなければなりません。
 配偶者にDV被害が生じる場合に子の返還拒否をすることを認めるか、見解を伺います。
 また、この問題を考える際に、現在の家庭裁判所の実務のあり方を見直す必要もあります。
 日本の家庭裁判所では、残念ながら、事実認定に難がある場合も少なくなく、母方の言い分を無批判に採用する傾向にあることも否定できません。DV冤罪の可能性を含め、家庭裁判所の事実認定の精度を上げていかなければ、安心して裁判所に判断を委ねることはできません。家庭裁判所の事実認定の精度を上げるため、その取り組みについて見解を伺います。
 さらに、国内においては、子供の連れ去り問題に対処するため民法第七百六十六条が改正されましたが、その運用においては法改正の趣旨が徹底されておりません。
 家庭裁判所の実務を前提にすれば、まず子供を連れ去れ、もう一方の親から引き離せと指導し、金もうけをする弁護士がいると言われます。
 というのも、今の家庭裁判所では、既成事実を追認し、子供を連れ去った親に親権、監護権を与える傾向が強くあるからにほかなりません。これが、子供を連れ去った方が勝ちというような、拉致司法と国内外で批判される実態です。民法七百六十六条が改正された今でもこのような対処法がまかり通っているのは、まさに家庭裁判所の実務上の対応が間に合っていないことの証左です。
 今のままハーグ条約を締結しても、子供の連れ去り案件への対応という意味では、国内外でダブルスタンダードとなってしまいます。今まで泣き寝入りをしていた親を救うためにも、ハーグ条約の締結を機に、家庭裁判所を改革し、事実の認定を柔軟にし、家庭裁判所裁判官等に対して、改めて、国内の民法第七百六十六条、この立法趣旨の徹底を図るべきと考えますが、この点の見解を伺います。
 みんなの党は、子の福祉の確保という観点から、この問題について、引き続き全力で取り組んでまいります。
 御清聴ありがとうございました。(拍手)
    〔国務大臣岸田文雄君登壇〕

国務大臣岸田文雄君) 三谷議員にお答えいたします。
 ハーグ条約と子の福祉についてお尋ねがありました。
 御指摘のとおり、ハーグ条約は、子の利益を最重要視するという基本理念を前文に掲げ、子の福祉という観点を中心に据えた条約です。
 国境を越えた不法な連れ去りによる一番の被害者は、子自身です。
 ハーグ条約は、子の監護に関する事項を決定するための手続は、子がもともと居住していた国、すなわち子がなれ親しんできた生活環境がある国で行うことがその子にとって最善であるとの考え方に立って、まずは、子が不法に連れ去られた状況の原状回復を図るものであり、今や、これが国際的なルールとして確立しています。
 また、ハーグ条約においては、返還により子の心身に害悪を受ける重大な危険がある場合などの一定の場合には、子の返還を拒否できるものとされています。こうした観点からも、ハーグ条約は、子の利益を最重要視した条約であると言えます。
 次に、アジア諸国ハーグ条約未締結国との間での子の連れ去り事案への対応についてお尋ねがありました。
 我が国としては、子の連れ去り等をめぐる問題が生ずる可能性が潜在的に高いとも考えられるアジアの国々を初めとして、ハーグ条約未締結の国々との間で、今後、本条約締結の重要性について協議を行っていきたいと考えております。
 また、ハーグ条約未締結国との間で生ずる個別の事案については、それぞれの国内法令に従って友好的な解決が図られるよう、政府として可能な限り支援を行っていきます。
 今後とも、例えば、個別の事案について両国間で情報の交換を行ったり、両国の協力のもと、面会交流の実現に向けた支援を行うなど、困難な状況に置かれた子の福祉を重視することを基本としつつ、本件問題に引き続き取り組んでいく所存です。(拍手)
    〔国務大臣谷垣禎一君登壇〕


国務大臣谷垣禎一君) 三谷英弘議員にお答え申し上げます。
 まず、離婚後の共同親権制度の導入についてお尋ねがありました。
 離婚後の共同親権制度の導入につきましては、賛否の意見が分かれているところであり、実際にも、離婚に至った夫婦間では意思疎通がうまく図れず、子の養育監護に必要な合意が得られないなど、かえって子の利益の観点から望ましくない事態が生ずるおそれもあることから、慎重に検討する必要があると考えております。
 次に、配偶者に家庭内暴力の被害が生じる場合の子の返還拒否についてお尋ねがありました。
 ハーグ条約及び本法律案においては、子の利益の観点から返還拒否事由が定められていますが、配偶者が家庭内暴力の被害に遭ったことをもって直ちに子の返還拒否事由に該当するものとはされておりません。
 しかし、具体的事案において、配偶者に対する家庭内暴力によって子の心身に悪影響を及ぼし、子を耐えがたい状況に置くこととなる重大な危険があると認められる場合には、裁判所は子の返還を拒否することになります。
 次に、家庭裁判所の事実認定についてお尋ねがありました。
 家庭裁判所の手続においては、当事者の手続保障の観点から、当事者双方に十分な主張や裁判資料の提出の機会を与えるとともに、必要に応じて裁判所が職権で裁判資料を収集することとされており、家庭裁判所は、一般論としては、これらの主張や裁判資料に基づいて、適切に事実認定を行っているものと承知しております。
 最後に、民法第七百六十六条の改正の趣旨の周知についてお尋ねがありました。
 民法第七百六十六条は、離婚の際に親子の面会交流や養育費の分担について取り決めることが子の利益の観点から重要であることに鑑み、改正がされたものであり、引き続き、その趣旨を広く一般に周知徹底してまいります。

 

 相変わらず、大臣の答弁は当たり障りのないもの。一方で、三谷議員の質問はさすが!弁護士として実務経験を積んできたからこそ、現場の実態がよくわかっている。弁護士であっても、実務経験が浅い国会議員は、問題意識すら持てません。三谷議員の今後のご活躍にますます期待したい。