時代が変われば、ルールも変わる!
窪塚洋介が出ているドクタースティック(電子タバコ)のCMタイトルにあるこの言葉。「時代が変われば、ルールも変わる!」
すべてはこの言葉に尽きる。家庭裁判所の裁判官をはじめ、調査官、調停委員には、是非とも、この言葉を胸に刻んでいただきたい。前例主義にとらわれていたら、日本の家族法だけが、時代に取り残されることになる。
これまでも日常生活ががらっと変わった出来事はたくさんあった。
①ハンセン病隔離政策の廃止
ハンセン病は感染力が極めて弱い病気であったにもかかわらず、我が国では、今世紀を通じて一貫して絶対的終身強制隔離・患者絶滅政策という誤った社会防衛論がとられていた。これは、医学的にも公衆衛生学的にも必要性を著しく逸脱したものであった。ハンセン病に対する立法は、1907年(明治40年)制定の法律「癩(らい)予防ニ関スル件」、が最初のもので、その後、1996年3月に廃止された。
②優生保護法の廃止
優生保護法は、「優生上の見地から不良な子孫の出生を防止するとともに、母性の生命健康を保護すること」を目的に、1948年(昭和23年)に制定された日本の法律だ。
この法律により、遺伝性の知的障害や精神障害などの病気があるとされた人への「優生手術(生殖腺を除去することなしに、生殖を不能にする手術)」が定められた。たとえ本人の同意がなくても、医師が申請して優生保護審査会の許可を得れば手術は認められた。また遺伝性でない場合でも、保護義務者の同意があれば同じく認められた。1996年に優生保護法が母体保護法へ改正されるまで継続された。
③飲酒運転の厳罰化
日本においては、1960年の道路交通法改正により、「飲酒運転は禁止」とされたが、刑罰は「二年以下の懲役又は十万円以下の罰金」であった。誤解を招くかもしれないが、今の50歳以上の方で、飲酒運転を経験したことがある人もいるかもしれない。それだけ、まだこの時代は、飲酒運転に対する厳しさはなかった。
しかし、1999年に発生した「東名高速飲酒運転事故(飲酒した運転手が運転する大型トラックが乗用車に突っ込み炎上。後部座席に座っていた子ども二人が亡くなった事故)」がきっかけとなり、飲酒運転が厳罰化された。さらに、2006年に発生した「福岡海の中道大橋飲酒運転事故」を契機に、さらに厳罰化され、酒酔い運転は、「5年以下の懲役または100万円以下の罰金」とされ、その後、飲酒運転1回で「免許取り消し」になった。
一般企業においても、就業規則で飲酒運転は懲戒免職の対象にしている企業も多くなっている
④タバコ喫煙の屋内禁止・ポイ捨て禁止
一昔前は、職場には灰皿があり、タバコの煙がモクモクした中で仕事をしていた人もいた。都内へ行くと、タバコのポイ捨ても目立った。子供ながらに、タバコばっかりで都内は嫌だなという印象を受けた覚えもある。
しかし、2003年には「歩きタバコの禁止」、2010年には「タバコのポイ捨て禁止」の条例が施行され、2020年4月には、健康増進法の受動喫煙防止対策により、①屋内禁煙、②喫煙室の設置の義務化などが決定された。現在、路上でタバコを吸っている人を見かけることが少なくなった。
⑤選挙権が20歳から18歳へ引き下げ
2016年6月から、選挙権の年齢が18歳に引き下げられた。これには、世界各国においても、選挙権の引き下げがすでに進んでおり、日本においても少子高齢化が進んでいることが要因となっている。
これらは、時代の進展と共にルールが変更された一例に過ぎないが、単独親権制度についても、今こそ、「原則、共同親権」に変更する時を迎えている。単独親権制度は、どちらか親権をとった親が勝ち、親権をとれなかった親は、その両親も家族も親族も不幸に陥ってしまう。
単独親権を採用している国は、先進首脳国G7(アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、イタリア、カナダ、日本)においては、日本だけである。また、G20においても、16ヵ国が共同親権を採用し、残る日本、インド、トルコ、サウジアラビアの4ヵ国だけが単独親権を採用している。もはや、世界においても、日本の単独親権は時代遅れであることが証明されている。
ロシアの文豪トルストイが残した「他人の不幸の上に自分の幸福を築いてはならない。他人の幸福の中にこそ、自分の幸福もあるのだ」の言葉に立ち返り、離婚した夫婦も、その子供も、皆が希望を持って、生きていける時代になってもらいたい。
誰もが幸福な世の中になるために。