習近平政権になってから、独裁色が濃くなっている中華人民共和国(以下、「中国」とする)。言論統制も厳しく、軍事力による威嚇も見せている、現存する共産主義国家のひとつである。
しかし、中国においても、離婚後の親権制度は、「共同親権」である。これまでも、G7やG20において、単独親権制度を採用している国家は日本だけであることを述べてきたが、冷静に見てみると、中国も「共同親権」であることには、正直、とても驚いた。
今回は、2014年3月に明治大学法科大学院主催で開催された「中国における親と子の法律問題」のシンポジウムの内容をはじめ、2013年12月に刊行された「親権をめぐる比較法的課題-日本の課題と各国の対応(「中国親権法制の現状と紛争の特徴」)」から確認したい。
<中国の共同親権>
①民法通則意見には、「離婚後において、子と共同生活をしている親は、他方の親による子に対する監護権を取り消すことができない」ことが原則である。
⇒現在の単独親権下の日本のように、別居親が差別され、同居親の意向により、子どもらと面会交流ができないということはない。同居親が別居親を排除することはできないという意味である。
②婚姻法36条1項は、「父母と子の関係は、両親の離婚によって解消しない。離婚後に、父または母のいずれかが、子に対する直接の扶養権を取得したとしても、当該子は父母双方の子である」と明記されている。
⇒離婚により、夫婦関係は解消されても、親子関係まで解消されることはない。したがって、日本のように、「親子断絶」もない。
※したがって、離婚後の親権型監護は、双方に属すると理解されているので、離婚の際に、子の扶養権だけの帰属については、離婚当事者聞の合意により取り決められるか、判決で決定される。
< 扶養権帰属に関する判断原則>
①授乳期原則
婚姻法36条3項に定められたもので、授乳期(子が2歳以下)にある子の直接扶養権を母に帰属させるという原則のこと。日本における「母性優先の原則」に近い。しかし、上記の婚姻法36条1項にある通り、親子関係が解消されることはない。
②子の利益の原則
子が10歳以上であれば、子の意見を取り入れるという原則。日本は15歳以上になっている。
③離婚夫婦の具体的な状況判断原則
子が、2歳以上、10歳以下であれば、子の利益の原則と離婚夫婦の具体的な状況を考慮しなければならないという原則。
共産主義と言えば「家族解体論」を思い浮かべるが、中国の場合、従来から「儒学思想」に基づく家族構成員間の相互扶助を原則としているため、離婚後も「子の最善の利益」を重視し、共同親権とされているようだ。
海外の共同親権制度を見れば、いかに子どもの利益を最優先し、単独親権制度における親子断絶などの問題が不条理なものであるか、一目瞭然である。日本も1日でも早く、共同親権制度を導入してもらいたい。