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【第177回国会】参議院法務委員会 第10号 平成23年5月17日

参議院法務委員会

共同親権」を取り上げた国会会議録を読んでみました。

 

登場人物:丸山和也 参議院議員自民党

     江田五月 法務大臣

 

丸山和也君 では、大分人数少なくなりましたところで、四十分という時間があるんですけれども、三十分でやめておけという声もありますので、そこらは臨機応変にやらせていただきたいと思うんですけれども。質問がそうたくさんありませんので、大臣も長々と、と言っては失礼ですけれども、十分に語っていただいていいかと思いますので、今日は短くと言うことはありませんから、思いのたけをしゃべっていただきたいと思います。
 そもそも、今回、民法の一部の改正ということで、非常に大きな改正だと言われているんですけれども、確かにそうも思えるんだけど、ややちょっとピンぼけと言うと変ですけれども、不徹底というか、どこを本当にどうしたいからこういう改正をしようとしているのかということがちょっと私は不透明なように思うんですけれども、今回の改正の目玉といいますか、これが主眼だというようなところを、大臣、ひとつ御説明いただきたいと思います。

 

国務大臣江田五月君) 長々と答弁して結構と言われますと、何か皮肉を言われているような感じで、なるべく短く答えたいと思いますが。
 児童虐待、これが深刻な社会問題となっている。そこで、童虐待への取組、これを民法あるいは児童福祉法の場面で更に進めようというのが今回の問題意識でございまして、その場合に、親権があるから虐待していいんだという、そういうことをあえて言うというか、あるいは誤解をしている、そういう親も見られるわけで、そこで親権制度というものにメスを入れようということが一つ。
 それから、親権制度にメスを入れますと、やはり親権者に代わって子に親権、監護権を行使する者が必要ということで、未成年後見人というものを増やしていこうということ。さらに、今の親権の行使の制約のこととか、あるいは離婚の場合の措置とかなどなどを通じて子の利益というのが一番重要なことですよと、これを導入をしようと。
 これは別に今始まったわけではないので、前も当然ですが、そういう文言が入っていなかったので、こういう文言を明確に入れようと、こうしたことが今回の主眼だと思っております。

 

丸山和也君 今おっしゃっていただきましたことであると思うんですが、そうだとしますと、私がやや不満に思ったというのは、やはり今大臣の答弁の中にもありましたように、親権の在り方というか、それが非常に一つの根幹になっているように思うんですね。そういう問題意識を持っておられると。
 やはり、児童の虐待防止、児童の福祉、いろんなことを考えた場合、親権者であるからということでいろんな好ましくない事態が発生していると。そうすると、やっぱり親権の在り方について、規制も含めて、停止、いろいろなことを含めて、従来からあった問題を含めて見直していくということで今回の改正があるということをおっしゃっているようで、やはり親権の在り方というのは一つの核になっていると思うんですね。
 そういうふうにとらえた場合、私は、これ昨今始まったことじゃないんですけれども、もう恐らく私が弁護士になって、そうですね、三十年、三十年以上になるんですけれども、やっぱり親権が単独親権であるということについての疑問というのはずっと持っていたんですよ。親権が単独で、例えば離婚したときに片方が親権を持って片方がなくなるというのはどう考えても理屈に合わないと
 これはやはりなぜかなという疑問を持ちながら、まあ現実は、男性は社会に出て外で働く、女性は家庭にいるとかこういう発想で、それから子育ては女性に任せるとか、特に乳幼児の場合は、そういう非常に時代がかったやや封建的な発想の中で、社会構造の中で、女性が子供を育てる、だから親権を女性にという、まあそれはどちらでも行くんですけれども、ほとんどの場合は現在もう親権は女性に争った場合なりやすいんですけれども、そういうことで単独親権というのが何となく是認されてきたように思うんですね。
 ただ、女性の場合も離婚してもやっぱり働く必要がありますし、あるいは養育費をもらう必要がありますし、両親とか手助けを受ける必要があるし、あるいは女性であるがゆえに再婚してまた別の家庭をつくるということもあって、いろいろなことを考えますと、決して単独親権が根本的に両親の間から生まれた子が、離婚したからといって、たまたま親が離婚したというだけで単独の親権になるということが考え方としておかしいなとずっと、今でも思っているわけなんですけれども。
 それで、更にそういう傾向は強くなっていると思うんですね。男女並びに働き方、生活の形態も変わってきていますし、それからやっぱり諸外国を見ましても、大半というか、正確に何割と言えませんけれども、主要な国の七、八割といいますか、ちょっと正確な数字は分かりませんが、それぐらいは共同親権じゃないかと思うんですね、考え方自身が。
 そうなりますと、今回、久々に一種の児童の虐待防止なり福祉を考えて大改正に及ぶとするならば、どうして根本的にこの親権の在り方、共同親権というところまで踏み込もうとしなかったのか、これについて私は是非聞きたいと思っていますので、ひとつ含蓄のあるお答えをいただきたいと思います。

 

国務大臣江田五月君) 私は法律家になって四十三年ぐらいですが、委員と違って実務に携わったのは初めの十年程度裁判官として携わっていただけで、後は実務に携わっていないので、ただただ長いというばかりで、しかも司法試験通って司法研修所へ行ったのはもうはるか昔のことになってしまいましたので、いろんな知識がさびついていると思います。
 そういう前提で今の委員の御質問にあえて答えていくとすれば、私どもが勉強した当時は、やはり離婚をする、そうするとその父と母の間にいろんなトラブルがある、それを子に引き継いでしまうことはやっぱり遮断をした方がいいだろう、あるいは養育についていろんな方針が違いがあって、それを離婚をした父と母で協議をしなければ決まらないというのもやはり難しい、子供の育ちにとって親の監護、教育というのはやっぱり一本化していた方が一つの基準がはっきりしていいだろうという、そういうことから単独親権にしたというように学んだような気がいたします。
 今回は、この児童虐待の防止という観点でメスを入れましたので、その根本のところまでまだメスを入れるに至らなかったということなんですが、さはさりながら、今委員がおっしゃるとおり、私どもが勉強した、お互いもうかなり古いですが、それから今日までいろんな変化が起きてきたのは事実だと思います。
 以前は、夫と妻がもう憎しみ合って別れるというのが普通の形だったのかもしれません。しかし、今は、結婚をして子供をつくってみたけれども、やはり私たち別々の道を歩んだ方がお互いの人生、より豊かに歩めるねというので、常ににっこり笑ってというのはもちろん難しいことではあるけれども、やはりそこは理解をしながら別れ、そして父と子、母と子、この関係はずっとこれからも続けていくんだという、そういう別れた夫婦の在り方というのも別に不思議ではなくなってきているということは、これは事実だと思います。
 そういうことを考えると、やはりこれは、今回は児童虐待防止ということでありますが、共同親権というのは一度真剣に議論をしてみる価値のあるテーマだと思っております。

法務大臣自ら、親権の在り方(共同親権)の根本までメスを入れるに至らなかったと発言。

 

丸山和也君 基本的には前向きに共同親権について検討をする価値があるとおっしゃっていただいて非常に結構だと思うんですけれども、私は、民法の改正といいますのは、平易なようで、社会の根幹といいますか、人間関係の根幹にかかわるやっぱり大きな一種の地殻変動を起こすぐらいのものですから、なかなかそうチャンスがないんですね。一旦決めますと、すぐ政策的にころころ変えるということはとてもできるような性質のものじゃありませんし、すべきじゃないと思いますので。今回もう一歩踏み込んで共同親権まで入っていくべきじゃなかったかなということが非常に残念でなりません。
 といいますのは、いろんな事例を相談を受けたり聞いたりしていますと、やはり一方に親権が行くということで問題になっているケースというのは、常識的な面会交流というのがやっぱり妨げられると。要するに排除されるということから、一方の親の非常に孤独感というか、生きていく上で支えというのがなくなって、それがだんだんエスカレートしてあるいはやや実力行使に出ると、それは法的に処罰される、あるいは子供からも危険な人物のように思われて排除されてしまうということで、更に苦しみの中に、連鎖の中に行っているという割かしそういう男性が多いので、私、その男性の悲痛な叫びをいっぱい最近聞いているんですよ。
 弁護士の中にもそういう人がおりますし、お役所の役人の中にもおられますし、元裁判官の中にもおられるんですよね。それで、政治家の秘書の方にもそういうのがおられまして、今回私がこの質問をすると言ったら、何人も来られまして、いや、実は私も会えなくて困っているんだということで、決してむちゃなことをしようとか誘拐しようとか拉致しようなんて思っていないんだけれども、親権が元女房の方に行ってしまって、あなたとは会わせたくないということで、家庭裁判所も協力してくれないということで、これは聞いていますと、同じ男性の父親としてかわいそうだなというより、真剣な悩みなんですよね。
 それぞれがちゃんと社会的に立派な方であるし、ただ子に会いたいと。せめて月二回ぐらいは週末を一緒に過ごしたいとか、ささやかな願いなんですけれども、これがかなえられないということで、やっぱりこれ根幹を考えてみますと、親権の在り方、それから離婚のときの親権の決め方、こういう法制度並びにそれから家庭裁判所の運用、ここら辺に原因があったと思うんですね。ですから、やはり今回、法改正の中で、養育監護とか面会交流についても家庭裁判所の指導の下にそれをきちっと決めなさいということにわざわざ明文化されたということで、非常に一歩前進だと思うんですね。
 ただ、そうやって悲痛な訴えをしてくる人たちのを聞きますと、やっぱり家庭裁判所がなかなかそういうふうに動いてくれないんじゃないかという、かなりもう絶望的な危惧を持っている方が多いんですよ。というのは、今までの家庭裁判所の運用を見ていても、やはり実際、面会交流なり養育監護というのは議題になっているんですけれども、親権が女性が取った場合に、面会交流させたくないと、私の方で責任持ってやりますからとかあるいは前に子供が嫌がったとかいろんなことがありまして、家庭裁判所も調査官なり裁判官いろいろ入って、一応努力はされて、その場はあるんですけれども、結論的にはなかなか認められないということが多いようなんですね。
 ですから、今回も法改正の中で、この七百六十六条の中で、子との面会及びその他の交流、子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項はとして、子の利益を優先して考慮しなければならないというふうに、こういうふうに、そして二項の中で、協議が調わないときは、家庭裁判所が同項の事項を定める、こういうふうになっているんですけれども、やや権利として、面会交流についても、面会交流する権利があるんだということまでは必ずしもうたっていない。協議して定めなさいと、定まらないときは家庭裁判所が何とか決めますよというような家庭裁判所に対する丸投げなんですよね。
 すると、実際にこの法改正の趣旨が両親共同親権的に離婚後もうまく機能するためには、やっぱり家庭裁判所が物すごい一種の意識改革をするなりしてそういう方向で稼働してもらわないとやっぱり余り変わらないと。こんなふうに条文が変わったということだけで裁判官なり家庭裁判所自身がどれくらい違った取組になるのか、ここが非常に私は現実的な問題として心配しているんですが、この点についてはやや楽観的に考えておられるんでしょうか、いかがでしょうか。

 

国務大臣江田五月君) 楽観的というわけではありませんが、ある種の期待を持っているというのは事実でございます。
 七百六十六条は、協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者、父又は母と子との面会その他の交流、費用の分担その他子の監護についての必要な事項は協議で定めると。家裁に丸投げじゃなくて、まず離婚をする父と母あるいは夫婦で、そこは必要な事項ですから決めなさいよと、こういう思いがにじみ出ているので、必要でない事項だと書いてない、必要な事項だと。しかし、その協議がなければ協議離婚が成立しないというところまではいっていないけれどもというある種の思いだと思います。で、次に子の利益を最も優先して考慮をする、さらに家庭裁判所と、こういう立て方になっているわけでございます。
 面会交流というのは必要なことなんだと、いいことなんだという思いが条文上にじみ出ているのならば、ならば共同親権ということの方が面会交流はよりスムーズにいくじゃないかという、そういう委員のお気持ちがあるんだろうと思いますが、これは確かにそういうケースもあると思いますが、さっき言ったとおり、今回は児童虐待ということなので、そこまでは踏み込んでおりません。おりませんが、単独親権であっても父と子、母と子、この関係は変わらないので、したがって単独親権であってもどんどん面会交流などやって一緒に育てようというような別れた両親の子に対する態度というものが生まれてくれば、これは大変、どういいますか、結構なことだというのが今回の法改正への期待だと思っております。

⇒さすが、弁護士!現場の状況と、家裁のダメな実態を認識されている。

 

丸山和也君 しつこいようですけれども、例えば協議離婚、まあ離婚については同意している、それで面会交流についてのみ両親が対立していると。それで、母親の方としてはできれば会わせたくない、子供がどうするとか、自分が、まあいろんな配慮はあるんでしょうけれども、会わせたくないと。しかし、こういう規定があるからやむを得ないと。裁判所の説得もあると。じゃ、月に二回ぐらい、それぞれ一時間ぐらいとか二時間ぐらいずつだというぎりぎりの同意をしたとしますよね。それで、男性の方は、いや、それじゃ余りにも、月に二回会って二時間程度のあれじゃもう十分なあれも尽くせないし、やっぱり最低でも四、五時間、そのうち一回ぐらいは週末に自分のところに来て泊まると、そういう外泊といいますかね、それも認めてくれと。こういうことになると、結局意見が、協議が調わないんですよね。それで、こういうことが対立する場合というのがもうほとんどなんですよ。
 そうなると、裁判所としてはやっぱり決裂はさせられないと。すると、一時間というところをまあせいぜい二時間とか二時間半にするとか、あるいは一方が、ゼロよりはいいでしょうと、それで多少あなたも譲りなさいよというようなところで、非常にやっぱり面会交流を極度に制限する形で認めるというところに落ち着きやすいんですよね。それで、哀れな男性は、ゼロよりはそれでも一目見たいという思いでやっぱりのむんですね。
 ある僕は週刊誌の記事で見ましたけれども、どうしても会わせてくれないということで、中学生になった娘さんが学校へ通う駅に通学の途中にお父さんがぱっと娘に駆け寄ったときに、娘がびっくりして逃げるというんです、逃げたと。それで、逃げたときにちょっと転んで、それを抱きかかえようとしたら、このくそじじいと言って叫んだっていうんですね。それで、それはやっぱりずっと面会交流を遮断されていて、それから、母親の方からお父さんに会っちゃ駄目、お父さんはこういう人なんだとかいろんなことをやっぱりある意味では吹き込まれていたらしいんですよね。まあ報道ですから全てが、細かいところはありませんけれども。そういう身を挺して娘に駆け寄って、ここしかないと思ったときに、くそじじいと言われたこの男性は心境いかなるものかと思ってですね。
 私は、やはりこういう極端に面会交流が遮断されていると、どちらにとってもやっぱり悲惨なんですね。娘は父親を憎み、恐れ、父親はショックを受けという、こういうことは、やっぱりちょっと一時間、二時間ちょこちょこっと形だけ会わせて、あるいは誰かの監視、立会いの下に会わせるというようなことではなかなか解消していかないと思うんですね。
 だから、ここらは日本の社会もやっぱりかなり勇気を持って開かにゃいかぬと思うんですね。離婚しても、それは良き、かつての同窓生と言ったらおかしいけれども、良き仲間というか戦友というかね、かつての同志ぐらいのつもりで付き合うぐらいの度量をやっぱり示さにゃいかぬし、またそういう、家庭裁判所自身がそういう啓蒙的精神で積極的に取り組まにゃいかないんですけれども、どういうわけか、調査官にしろ裁判官にしろ、やっぱり割かしそこらの頭が柔軟でないというか固いというか頑迷固陋というのかもうカビが生えているというか、そういう方が多いというふうにも被害者的な男性からは聞こえるんですね。
 ですから、是非、家庭裁判所の役割が大きくなりましたから、家庭裁判所に対するそういう意識改革ということを強く私は望みたいと思うんですが、その点については何か御意見ございますでしょうか。

 

国務大臣江田五月君) 委員の御指摘は本当に含蓄のある御指摘だと思っております。
 社会というのは、やはりこれは人間同士のきずななんですね。そのきずなの中で最も深いのが夫婦のきずなであり親子のきずななんだろうと思います。それを、せっかくあるきずなを大切にするんではなくて、きずなを絶っていこうというのはやはりいい傾向ではないと。
 ただ、以前はそのきずながどうしても身分的なきずなになったり、あるいは子はかすがいとか言って、もう子がいるんだからここは何としてもあなた、夫が少々わがまま言っても我慢しなさいよというような、ここで耐えるのが女の務めみたいな、そんなものも随分強かったんですが、それではいけないんで、やはりきずなというのはお互いの共感、お互いの理解、そういうものの上に立ってできていくのでなければならないので、今そうした岐路に私どもの社会が立っているんだろうと思っております。
 そんなことを踏まえながら、新しい家族や親子の在り方、離婚後の夫婦であったものの在り方、こうしたものをこれからみんなで探っていく時代に来ているわけで、そういう思いをこの法改正というのは含んでいるものだと、私はこの案文を作ったときにはまだたしか法務大臣ではなかったのかもしれませんが、そういうような理解をしておりまして、家庭裁判所におかれても是非そういう辺りのことをよく理解の上で家裁実務を運営をしていただきたいと願っているところでございます。

法務大臣も家裁の意識改革を期待しているが、この時と現在と比較しても、大して変わっていない。つまり、家庭裁判所の意識改革は進んでいない。残念。

 

丸山和也君 是非お願いしたいと思います。
 それから、よくそういう子に会わせない理由、制限する理由として、暴力を振るうとか、かつてDVがあったとか、それから、よく女性側から主張されるんですけれども、そういう例もそれはあるんでしょうけれども、いろいろ細かく聞いてみますと、女性からの暴力というのも結構多いんですね、昨今は。だから、おとなしい男性が、草食人間じゃないですけれども、多くて、女性側の方が、獣とは言いませんけれども、非常に乱暴で強くなって、暴言を吐くし、時々は女性が手を出すと。女性が手を出してもなかなかDVと言われないけれども、男性がちょっと手を振り上げるとすぐDVだと言ってね、それで警察が動いたりするという、こういうことがやっぱりあるんですよ。
 だから、僕は、そこら辺、時代は大きく変わっているし、やっぱり個々の判断をしないといけないのに、まだそういう弱い女性を保護するとか、そういう観点から離婚の運用、親権の運用、親子関係も見られているところにやっぱりかなり時代的ずれが出てきていると思いますので、そこら辺は、まあ法務大臣に直接言ってもあれなんですけれども、一言ここで言っておきたいと思います。
 それから、だんだん時間の関係ではしょりますけれども、ハーグ条約について少しお聞きしたいと思います。
 これは、私はそういう条約に加盟するということについては賛成なんですけれども、結構これは厳しい世界に突入するという予測をしているんですね。
 それから、本当に日本人が例えば子を連れ去ってきたような場合、そういうハーグ条約の下で対応していけるのかと。そこら辺はよく、やっぱりこれは基本的には、原則は子を連れ去った場合は元の居住国に返さなきゃいけないと。そこから親子の関係についていろいろ定めていこうということですから、一旦実力行使的に日本に避難してきた人がそういう法の下へさらされると。もちろん、例外的な場合は、DVがあるような場合は返さなくていいとかいろいろ言っていますけど、そう生易しくほとんどの場合が例外だ、例外だということにならないと思いますので。
 ここら辺について、今の時点で、いや日本も加盟するんだという、これはまた民法改正と違って大きな決断をされているように思うんですけれども、これはどういう理由なんでしょうか。

 

国務大臣江田五月君) 国際結婚というのはもうごく普通のことになっていると思います。国際結婚は普通だけど、国際離婚はめったにない、そうはなかなかいかないんで、やはり国際離婚というのも普通のことになってきている。その場合に子供は、親権は共同という場合もありますが、子育てをするというのはやはりどちらか、子供は生身ですから両方に引き裂くわけにいかないので、子育てをどちらの親がやるのかということの審判、判断はどこでするのかと。
 これは、やはり別れる前に子供がいた場所、そこの裁判所なり司法機関でやることが適切だというのが国際ルールであって、そこで、そういうような判断を経る前に国境を越えて子供が連れ去られた場合には元へ戻して、そしてその子供の養育についてちゃんと手続を法定しましょうというのがハーグ条約で、したがって、ハーグ条約というのは子供を誰が育てるのがいいかということではなくて、どこで決めるのがいいのか、そのどこというのが、つまり常居所地国、そこへ子供を戻しなさいと、こういうルールでございまして、このハーグ条約しかそういう場合のルールは今ありませんから、私どもは、やはり国際社会の一員として生きていく以上、そういう今あるルールの中に私どもも入っていって、それによりいいルールに変えていこうという努力をしていくべきものであると。
 初めからあそこが悪い、ここが困る、だから入らないというのでは、もう今これだけ国際結婚、国際離婚が普通のことになっているときにやっていけないというような思いで、ハーグ条約への加入の準備を始めるかどうかというところが今煮詰まってきつつあるというところでございまして、是非、これはそんな意味から、ひとつ日本の国を外国に、国際社会に開いて、そうした場面においても日本が国際社会のルール作りで一定の役割を果たせるようにしていきたいと思っているところでございます。

丸山和也君 それに関しまして、日米間で、ある報道で調べたところによりますと、日本人女性とアメリカ人男性が結婚して向こうに住んでいたんですけれども、主としてDVかも分かりませんけれども、そういう理由で子供を連れて、もちろん夫の承諾なく独断で子供を連れて帰ってきて、それで、男性側から戻せという係争になっているのは百四、五十件ぐらいですかね、日米間であると聞いています。それで、これはもちろん女性側としてはもう二度と戻りたくない、向こうに返したくないということなんですけれども、そういう紛争状態になっていると。
 それで、つい先般ですかね、新聞に見ましたけれども、そういう例の一つで、やはり子供を奪われたということでアメリカ人男性がどこかの州で損害賠償請求を起こして六百万ドルか何かの判決が下りていましたけど、六百万ドルというと日本円でいうと五億円ぐらいになるんですけれども、それを出したり、その男性は日本に来て、一時、連れ去ろうとして日本で逮捕されて、ただこれはそのまま起訴もされずに釈放されてアメリカに帰っていると。こういうまさに刑事事件、民事事件絡んだ国際紛争になっているのも新聞で報道されていました。そこまでいかなくても、百四、五十件があるんじゃないかと言われていましたので、やはりこれはまたもっと増えてくるんじゃないかと思うんですね。
 そういう意味で、例えば、取りあえず条約に従ってアメリカに子供を返し、そこで子供の在り方、夫婦の在り方について協議するとしても、当然法手続に従ってやるわけですから、あるいは向こうで現地の弁護士を雇う、あるいは滞在する、それからまさにそこでしばらく居住してやる、そういう物理的な負担があるわけですよね、当然、日本人女性とすれば。なかなか大変なことですよ。
 そういう、だから国際的に子をめぐる紛争というのは非常にレベルの高いというか、次元に入っていくと思うんですね。ある意味、今までは実力的に逃げておれば何とか時間の経過とともに収まるという、こういうことを期待していたんですが、これからは堂々と法的舞台で闘わなきゃならない。闘うと言うとあれですけど、協議したり争ったり闘ったりしなきゃならぬという非常にレベルの高い次元に入ることを要求されることになると思うんですね、このハーグ条約に入るということは。それでも、そういう時代の流れなんだということであれば、また私はある程度それはもうやむを得ないと。
 だから、日本人、ほとんどの場合は女性ですけれども、そういう理論武装なり、国際的にやっぱり闘うマインドの訓練もしていかないと国際競争の中ではこれは勝ち抜けないと思いますので、そういうことも、やっぱりこのハーグ条約の意味というのは非常に重いんだよということも、裁判員制度じゃないですけれども、政府としてこういう方向で進んでいくのであれば、国民にやっぱり周知させるというか、知らせる必要もあると思うんですけど、いかがでしょうか。

 

国務大臣江田五月君) 今委員が御指摘のような事案がつい先日報道されたのは存じております。
 そういうものも含めて、やはり国際社会の中で日本というものが生きていく、国際社会の中で生きていくのは日本という国だけじゃない、日本人自身が一人一人やはり国際社会の中で生きていくという時代になってきていて、そういう時代に国境を越えた結婚をしようとする場合には、ちょっとイケメンだからひょいという、そうじゃなくて、やっぱりそこはきっちり自分で判断をし、別れるときにもよく覚悟を持って話合いをして別れるということでなければいけないと。日本にとにかく子供を連れて帰って実家に戻ってじっと逼塞、蟄居しておれば一定の期間がたってもうこれで大丈夫だという、やはりそれはそうばかりはいかなくなるよという時代になっているのだと思います。ハーグ条約の場合は、一定の養育の年限がたてばハーグ条約が働く場面でなくなるということはありますが、やはりそこに逃げ込むのではいけないので、ちゃんとルールに従った処理をしていくということで。
 ただ、今、アメリカはそんな国だから、とてもアメリカなんか相手にハーグ条約なんか入ったら大変だという、そういう心配もあるかと思いますが、今のこの損害賠償額、これは日本の場合には実際の損害、精神的な苦痛も含めて実際の損害についての賠償でなければ、単なる懲罰的な賠償の場合にはこれは強制執行はされないと、日本で執行判決は出さないというのが最高裁判所の扱いですので、そこはそんなに心配することはないと。ただ、だからといって居直っちゃいけないということだと思います。

ハーグ条約を批准する時も、賛否はあった。条約と国内法の整合性がついていないことで、子の連れ去り問題が深刻になっている。今こそ、条約遵守義務を果たすべき。

 

丸山和也君 じゃ、時間の関係で一点だけ。
 ちょっと前後して元の問題に戻るんですけれども、離婚後の面会交流の中で、今、何というんですか、FPICというのが、御存じかと思うんですけれども民間団体でございまして、これが家裁の調査官とかいろいろやられた方が中心になってつくられている団体のようなんですね。それで、そこがいわゆる面会交流についての相談を受けて、その仲立ちをして、いろいろ取決めをして、それでそういう、まあ家裁のお墨付きのような感じですね、そういういろいろお手伝いをしてまとめているという団体があるようなんですけれども、これは非常に結構なことだと思うんですけど、このFPICもなかなか利用制限というのが、例えばかつてDVあった人は駄目とか、あるいはこの面会交流認めるのが非常に制限されているんですね。もちろん宿泊というのは駄目とか、それから一時間以内だとか、それから監視付きだとか、結構制約が多いようなんですね。
 ですから、こういう団体ができて活動することは基本的には非常にいいんですけれども、やはりそこの、せっかくいいものができたのであれば、そこら辺の運用の仕方なりをもう少し柔軟に改善するなりして、この新しい法改正の趣旨に沿った形で、利用しやすいもの、また利用したいなと思うものになってもらいたいと。
 これはだから、法務大臣にどうこうしろという趣旨じゃないんですけれども、こういう問題点もあるということを指摘して、私の質問を終わりたいと思います。
 以上です。
 大臣、一言あれば。

 

国務大臣江田五月君) 親と子の面会交流をどういうふうに円滑に進めていくかということについては、これは社会的なサポートというのはやっぱり必要だと思います。どういう組織機構がそういうサポートができるかということで、家庭裁判所もいろいろと行います、あるいは厚生労働省もいろいろな仕組みをこれから用意していくことと期待をしております。
 そうした中で、今委員おっしゃった家庭裁判所のOBの皆さんが、NPOでしょうかね、自主的な団体をつくって、そこでいろんな活動をしながら面会交流をサポートしていくというような取組が行われているものと承知をしております。残念ながら、今のその家庭裁判所OBの皆さんの活動というのは、まだまだ本当に生まれたばかりというか卵の段階で、これからこれがどういうふうに大きく育っていくかということですが、これはやはりみんなで育て、そういう種類のものを多様に育てていくことが必要だと思っております。

⇒FPICが、今、大問題。