miwasan0216’s blog

愛する子供たちのために、理不尽さと闘う父。誰もが幸福な世の中になるために。

【第183回国会】衆議院法務委員会 第9号 平成25年4月19日

衆議院法務委員会

共同親権」を取り上げた国会会議録を読んでみました。


登場人物:郡和子 衆議院議員民主党

     長谷川京子 弁護士/日本弁護士連合会両性の平等に関する委員会副委員長

     椎名毅 衆議院議員みんなの党

     高橋宏志 中央大学大学院法務研究科教授

     棚瀬孝雄 中央大学大学院法務研究科教授

 

○郡委員 また、ハーグ条約締結を契機に、共同親権のもとでの子連れ別居は、残された親の親権、監護権を侵害するものであって、これは違法とすべきであるというような主張も出てきているわけでございます。それからまた、一方では、子供の生活環境が変化をしていくということに兼ね合わせて、これも違法というふうにすべきではないかという主張もされる方がいらっしゃるわけですけれども、この点については長谷川参考人はどのような御見解でしょうか。


○長谷川参考人 まず、親の親権とか監護権というものは、親が子供を支配する権利とか権力ではなくて、子供の生存と発達のニーズに応える責任というべきものであります。したがって、子供の移動の適否を親の権利侵害というフィルターを通して評価することには疑問があります。
 子供の移動の適否というのは子供自身の観点に立って行うべきであります。例えば、移動前の子供の生活状況、とりわけ誰からどのようなケアを受けてきたのか、どういう事情で移動することになったのか、移動後、子供の生活状況はどうなのか、ケアの状況はどうなっているのか、そういったことを個別具体的に検討して、どちらの親が子供と生活をするのが子供の福祉にかなうのかということを比べて決めればよいことだというふうに思います。
 現に、現在の家裁実務もそのように運用されていると思います。父母が別居する際に一方が子供を連れて家を出る、いわゆる子連れ別居というのは、それ自体が他方の監護権を侵害するというふうには考えられていません。
 子供にはそもそも、切れ間なく、なれ親しんだ監護を受ける権利があると言わなければいけません。だから、監護というのはそういう子供のニーズに応えていく親の責任であって、新たな環境が子供の成長、発達の利益を損なうのか、それに適するのか、子供中心の観点から評価するべきものだと考えられているというふうに思います。
 どうもありがとうございました。


○郡委員 ありがとうございます。
 民法の改正がありまして、協議離婚の際に、面会交流やそれから養護費の分担に関して取り決めをするということが明文化されたわけでございまして、離婚届の中にそれを記載する欄も設けられるようになりました。一定の成果、効果というのも上がっているのであろうというふうにも思うわけですけれども、共同親権の行使それから積極的面会交流というのは、ある意味では条件が整っていないとなかなかできないことであろうというふうに思います。
 それぞれが円満に離婚できた場合には、そういうことが可能なのかもしれませんけれども、そうでない場合というのを想像いたしますとなかなか難しいわけでして、特に、DVからの救済システムがいまだ十分に整っていない日本においては、このことによって現場に妻がとどまらざるを得ないような状況もまた生まれてくるのではないかなと私自身も心配をしているところがございます。
 ところで、ハーグ条約の締結国は、御承知のように、ほとんどが離婚後も両親が子供の親権を持つ共同親権をとっている国でございます。法制審や外務省によりますと、ハーグ条約批准に関するパブリックコメントの中では、特に、この締結に当たって、日本でも離婚後の共同親権、共同監護制度を導入すべきであるという意見が寄せられていたというふうに承知をしておりますけれども、離婚後の共同監護法制につきまして、監護権をめぐる紛争解決の有効性、そしてまた子供の生存、発育といった福祉の観点から、どのように評価されているのか。実際に現場で裁判等を担当されてこられた長谷川参考人に伺いたいと思います。


○長谷川参考人 ありがとうございます。
 私は、現場で事件を扱っております。ですから、そこの感想から申し上げますと、離婚後も父母が協調して子供の監護にかかわることが望ましい、理念としてはそうだと言えるとしても、そういう望ましい家族の理念というものと現実の紛争家族の実態とは大きく乖離しております。離婚後の監護を裁判所で法律に基づいて決着していかなければいけないのは、その紛争家族の方なのです。
 紛争家族に望ましい家族のモデルを当てはめて、そのもとで協力と協調をしなさいということを幾ら求めても、結果的には、さらに紛争をこじらせて、際限のない父母の争い、不和に子供を巻き込んでいってしまうという不幸があります。それはやはり子供の福祉を害するというふうに思います。
 そういうことで、ちょっと私も関心を持って諸外国の共同監護制について一部調べているんですけれども、例えば、子供の利益を重視したスウェーデンでは、一九九八年に裁判所による離婚後共同監護命令というのを制度化しています。しかしながら、父母が協力できない事案では子供の福祉を害するということがわかったので、二〇〇六年にそれを改め、父母が協力できない事案ではそういう命令は出せないというふうに改正しております。
 ニューヨークアメリカで共同監護制をとっているところでありますけれども、そこも、双方の親が協力できる場合にはそういう命令を出す、あるいは双方が同意している場合には共同監護ということにするけれども、そうでない、うまくいかない場合には共同監護は命じないということが現役の裁判官の報告論文などで知られています。
 それから、英米法系の中で最も先進的だとされているのがオーストラリアという国なんですが、そこでは、二〇〇六年の改正で、とても監護紛争がふえるので、それを決着させるために、双方の親に子の監護にかかわる共同の責任があることを前提として、子供と過ごす時間を均等分配するというような法改正が行われました。親が、他方の親に対して友好的である方が、子供が他方の親との関係を維持できるだろうということで、友好的な親ルールというようなものも導入されたり、それから、虚偽のDV、虐待の主張をした者には制裁を与えるというようなことも盛り込まれていました。
 ところが、その結果、ふたをあけてみると、実際には、DVや虐待がある事案においてその主張ができなくなったり、安全面の懸念や暴力、それから、父母の高葛藤事案というもののもとでは、子供の福祉に重大な悪影響が出たり、それから幼い子供の発達上のニーズに有害な影響が懸念されるということが報告されました。これは、公的な調査の結果、報告されています。さらには、そういう当事者間でもともとだったら合意が形成されていたような事案にも紛争が拡大して、子供の監護をめぐる紛争がより激しくなってしまったということがあります。
 こういう二〇〇六年法改正の影響が見過ごせないということで、オーストラリアでは二〇一一年にさらなる改正が行われました。そこで採用されたのは、DVや虐待の定義を拡大しながら、別居親との交流よりも、子供の安全を最優先事項とするという方針です。また、その際には、友好的な親条項は削除されましたし、DV、虐待が証明できなかったときの制裁条項も削除されています。
 こういうようなオーストラリアの苦い経験は、例えばイングランドでも受けとめられて公的な検討が行われ、その結果、子供の養育に関して父母双方が相当の、または均等な養育時間を請求する当然の権利を有すると認識させるような規定、または、そう認識させるリスクのある規定を置くことに反対するという公式の最終結論が示されております。
 日本での……

○石田委員長 参考人、時間が参っておりますので、簡潔にお願いいたします。

○長谷川参考人 はい、申しわけありません。では、もう終わります。
 日本での印象とは別に、やはり、そういう欧米諸国で、必ずしも、共同監護制を導入したから紛争を決着することができなかったということを学びながら、日本として、そういう紛争家庭で育つ子供の福祉をどう守っていくかということをしっかり議論していく必要があると思います。
 どうもありがとうございました。

長谷川氏は、現在も、共同親権反対論者だが、「子どもの視点に立つ」という観点では、共同親権の根本精神は同じのような気がする。しかし、親権争いを前提に考えているから、反対に傾くのではないか。

 

○椎名委員 ありがとうございます。
 そうしますと、まず審議会の審議の経過なんですけれども、ハーグ条約は、基本的には、子の返還に関する手続を定める手続法だという理解をしておりますけれども、そういった中で、要するに何を申し上げたいかというと、国内の実体家族法については基本的には中立的な価値観を持っている、そういうふうに説明をされておりますが、事実を調べますと、基本的に加盟八十九カ国のうちの十四カ国のみが離婚後の単独親権主義、その十四カ国のうちの十二カ国がカトリックそれからイスラムなどで、基本的には離婚率の非常に低いような国々だったと思います。
 要するに、何が申し上げたいかというと、この審議の過程の中で、単独親権主義の国々がこの条約を締結した後どういった運用をなされているかといったことについて、どの程度調査をされていらっしゃったのかということを、同じく高橋参考人に伺えればと思います。

○高橋参考人 委員御指摘のとおり、私どもは手続を扱いましたので、単独親権制度であっても、あるいは共同親権制度であっても対応できるような手続をつくりました。そして、単独親権か共同親権かは法制審議会で申しますと民法関係の部会で扱うことになりますので、そういう意味で本格的に議論はしておりません。
 しかしながら、我々も、いろいろな参考意見を、意見自身をお聞きしたこともございますし、学者の研究を全員に配付して勉強したこともございます。今ちょっと資料がなくて申しわけないんですが、九州大学のある有名な先生のものを特によく勉強させていただきました。
 しかしながら、この手続法に関しましては、共同親権か単独親権かは重要な論点にもともとならないものであったということでございます。
 以上でございます。

○椎名委員 ありがとうございます。
 たてつけ上、価値中立的だというのはまさにそのとおりだと思いますけれども、今こちらにいらっしゃっていただいております渡辺参考人が御指摘されているところなんかはまさにそういったところだと思っておりまして、事実上、日本の家裁の実務を前提とした場合には、子供の連れ去りみたいなものが肯定化される、継続性の原則みたいな運用が肯定化されていくというような懸念を示していただいているんだと思います。
 そういった観点から、私自身、たてつけ上、価値中立的ではあったとしても、実際のところとしてどのように運用されているかというところに比較的問題意識を持っているところでございますが、今伺ったところですと、基本的に単独親権主義でどのような運用がなされているかというところは余り調査をされていないように見受けました。
 では、棚瀬先生にお伺いできればというふうに思います。
 子どもの権利条約、恐らく九条だったと思いますけれども、親子の不分離というような規定があるかと思います。私自身、この親子の不分離という規定そのものが、ハーグ条約の背景にある子の最善の福祉というものを価値づけているものなのではないかなというふうに思っておりますが、もう一回、子の最善の利益ということの意味について教えていただければというふうに思います。

○棚瀬参考人 おっしゃるとおりです。国連児童権利条約九条三項というのが一番根拠規定になるわけですが、そこでは、別れて暮らす子供も、双方の親と定期的かつ直接の接触を持つというその子供の権利を締約国は保障する、そういう規定の仕方をしています。その意味では、実際に別れて暮らす親がいて、そして子供がその親と会えないような状態を国が半ば放置していれば、この国連児童権利条約九条三項に違反するというふうになると思います。
 では、なぜ子供がそうした両方の親と会うことが必要なのかということについては、先ほど心理学の研究で参照しましたように、やはり子供には両方の親が必要なんだというその一言に尽きるのではないかと思います。

○椎名委員 どうもありがとうございます。
 子の最善の福祉を重視するからこそ、この法律のたてつけ上も二十七条で、条件が充足されたら原則として返還をする、そういうたてつけになっているんだというふうに思っています。
 しかし、二十八条というところで子の返還拒否事由というものがいろいろ記載されているところ、ここについて少し問題があるのではないかと私自身は思っています。この二十八条一項というところに返還拒否事由が多数記載されていることによって、これで事実上、子の連れ去りの可否という観点において実体判断をしてしまう結果にならないかというふうに思っています。
 すなわち、何かというと、結局のところ、子の最善の福祉からその返還をすることが原則であると言っているにもかかわらず、返還をするかしないかについて完全に実体的な判断をする、その結果として、先ほど棚瀬先生がおっしゃっていたような、常居所地国の相手方の裁判、家事手続を信頼する、そういったたてつけになっていないのではないかということを私自身は懸念しておりますが、棚瀬先生の御意見を伺えればというふうに思っております。

○棚瀬参考人 御案内だと思いますが、実は、外国では、一部、もう本当に、日本はハーグ条約を批准しても本気で守る気はないのではないかという議論があります。そして、下院議員の、特にアメリカのスミス議員等を中心として、日本国を名指しで制裁しようというような法案も繰り返し出されているところであります。
 最近、私が見たアメリカの判例の中には、逆に、こんなのがありました。つまり、私たち日本から見れば、アメリカの常居所地法を信頼する、あるいはイギリスの常居所地法を信頼するわけですが、信頼して、子供を帰して、そこの裁判で判断してもらう。ところが、それについて今問題があるわけですが、逆に、ではアメリカはどうなのかというと、アメリカのワシントン州判例なんですが、ごく最近の判例なんですが、堂々とこんなことを言っていました。
 それは、ワシントン州は、国際礼譲、インターナショナルコミティーというんですが、ハーグ条約と同じ精神ですが、それを尊重する、しかし、親と子供が分離されてはならないというその子供の基本的な権利を、人権を侵害するような国のその裁判決定に対しては私たちはインターナショナルコミティーを使わない、こういうふうに言って、そして、日本の離婚判決のワシントン州での執行を拒否したという判例をごく最近見ました。
 ですから、外国の日本を見る目は非常に厳しいということを御理解いただきたいと思います。

○椎名委員 ありがとうございます。
 この二十八条の返還拒否事由を結局争うことによって、やはり実体判断、日本の家裁の実務の判断になってしまいかねないということの懸念を海外からもいただいているということだというふうに理解をいたしました。
 そういう中で、やはり、そうすると、この二十八条一項の取り扱いというのがどのように行われていくのかということが結構大きな問題になるんじゃないかと思います。この二十八条の一項の立証責任、これは誰が負っているんでしょうか。すなわち、ここで申し上げている立証責任と言っている意味は、要は、証拠によってきちんと立証されなかったら敗訴をするという責任を誰が負っているのかということです。
 敗訴をするということは何を意味するかというと、あくまでも、返還が認められて、その上で、常居所地国の家事審判の手続でもう一回子の監護権それから親権のあり方について定めをしていく、手続に乗るという意味だと思いますが、改めて伺いたいと思います。高橋参考人に伺えればと思います。

 

○高橋参考人 立証責任についてまずお話し申し上げますと、立証責任と申しますのは、定義上といいますか、概念上、十分に証拠調べをしたけれどもどちらが真実かわからない、そうしますと裁判ができなくなってしまうわけですが、それで裁判拒否はいけないからどちらかに決めましょうということでございまして、証拠調べを十分にやった上でわからなかった、これを典型的なこととして考えております。
 そして、証拠調べを十分やったけれどもという、ここでは当事者がもちろん証拠を出してもらうということは必要です。それは当事者の責任としてこの法律にも書いてあります。しかし、裁判所も職権でいろいろ手助けをする。中央当局に調査の嘱託等々いたしまして、在外公館も協力してくれるでしょう。そういう体制で十分調べた上でなおわからなかったときということで、これは返還を拒む方に負担を課す、つまり、帰すということでございます。
 この審理を通じて、ハーグ条約が禁止している実体判断に入ってしまうのではないかという御懸念は、抽象的にはよく理解できます。だからこそ、管轄を集中して、裁判官も研修、裁判官だけではありません、いろいろな人が研修をしてそうならないような実務を日本でつくっていかなければいけない、そういうことだというふうに理解しております。
 以上です。

○椎名委員 最後に、要は、この二十八条の一項の四号だと思いますけれども、ここで一番ターゲットにしているのは、先ほど来、大津参考人それから長谷川参考人といった方々が懸念を表明されていたDVに関する問題だというふうに思っています。
 DVに関して、返還拒否事由に該当するかしないかが問題となるのは、多分、四類型あると思います。何かというと、事実と証拠という意味です。
 事実上DVがあったかということについて、マル、バツ、三角、それから、証拠としてDVが証明できるかどうかというところについて、マル、バツ、三角で考えてみると、事実としてDVがあり、証拠としてDVを証明できる事例、これについては保護をしなければならないのは当然です。返還拒否事由に該当しなければならない、それはそうだと思います。
 その二番目として、事実としてDVがあり、証拠としてDVが証明できるかどうかよくわからない、この辺についても何とかして保護していかなければならない、それは事実だと思います。
 しかし、先ほど来、渡辺参考人が当事者として懸念を示している部分というのが、まさに、DVはないけれども、さらに、証拠、物証としてはないけれども口頭の証拠みたいなもので虚偽DVみたいなものが裁かれたとき、こういったところについて、むしろ保護をしてはいけないわけです。
 さらに言うと、もう一個、DVがあったかなかったかについて評価の問題になる。例えば、どこの夫婦でも夫婦げんかはあるわけでございますけれども、たまたま手が当たってしまったとか、軽く殴ってしまったけれども、以後、もう二度としないと反省をしているとか、そういった評価の問題として、これをDVと評価するのかしないのかというところ、人によって価値観が分かれる部分というのがございます。
 おおむね問題となり得る類型は、多分この四類型ぐらいだろうというふうに私自身は思っております。
 私自身の懸念としましては、虚偽DVといったものについて、三番目の類型ですけれども、これが二十八条の一項で保護されることになりかねないかということが、日本の家裁実務との兼ね合い、それから立証責任との兼ね合いで問題視させていただいたところでございます。
 今後の運用として、ここについてどのような展望、考え方を持っているか、高橋参考人それから棚瀬参考人に伺えればというふうに思っております。

○高橋参考人 証拠の問題は大変重要な問題だと私も認識しております。また、特に、外国で起きたことの立証ということでございますから、大変重要な問題だと思います。
 私は、急がば回れではございませんが、この点は、日本の法教育に非常に期待をしております。これから、国内でも国外でも、特に国内であれば、法的にどういう妥当な行動をとらなければいけないのかということを、小学校、中学校、高校の段階から身につけてもらうということでございます。
 ちょっとよくない例になるかもしれませんが、DVの被害に遭っていると主観的にしゃべる。私は被害に遭いました、なぜ信じてくれないんですか、裁判官。これを言うだけではだめなんです。やはり、被害に遭ったとき、携帯電話で写真でも撮っておくとか、在外公館に駆け込んでそこで記録をとってもらうとか、そういう身を守る手段をこれからとっていかなければいけない。
 それは広い意味で法教育ですし、仄聞するところによりますと、外務省も法務省も、そういう教育活動というのでしょうか、広報活動はするというふうに聞いております。それをもとにしますと、虚偽DVも、これは楽観的かもしれませんが、見抜けるだろうと思っております。
 まさに、DVがあったあったと言うだけではだめなんですよね。それが本当にあったのを潰してもいけませんし、なかったのにあったと言うのを認めてもいけない。そういう手段は、法教育を含め、そして裁判所の実務の中で形成されていくものであると私は期待しております。信じております。

○棚瀬参考人 アメリカの例でも、やはり、DVがあったという訴えは非常にたくさんあります。普通の家族法の事件でもあって、みんな裁判官は頭を悩ませていることはおっしゃるとおりです。
 ただ、二つのことだけを申し上げたいんですが、一点は、DVがあったということと、それから、だから親子はもう会えないんだということは、やはりできるだけ分けて考えたいというのがアメリカの考え方であって、DVはDVとしてきちっと保護する、だけれども、それが理由で親子が完全に生き別れになるという事態は可能な限り避けたい、こういうのがアメリカの基本的な態度であるというのが一点です。
 そしてもう一つは、DVについてもしっかりしたリサーチがこれから必要だろうと思うんですね、社会心理学的な研究が。
 そして、最近のアメリカの文献を読みますと、DVにも幾つかのパターンがあるといいます。まさに絵に描いたような、反復的に発生するDV、しかも非常に強度なDV、暴力と、それから、まさに夫婦が別れるときに、離婚をめぐって争いが出てきて、そして激しい口論になったというときのDVとは全然違うんだということをアメリカの裁判官たちは認識していて、それについてたくさんの社会心理学的研究が最近出ました。ですから、それを分けて対応するというのが現在の動き方です。

○椎名委員 どうもありがとうございました。

棚瀬孝雄氏の指摘はさすがだなと感じる。家族法の世界に戻ってきてほしい。

 

 

 

【第183回国会】衆議院本会議 第14号 平成25年4月4日

衆議院本会議

共同親権」を取り上げた国会会議録を読んでみました。


登場人物:三谷英弘 衆議院議員みんなの党

     岸田文雄 外務大臣

     谷垣禎一 法務大臣

 

三谷英弘君 みんなの党三谷英弘です。
 国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約、いわゆるハーグ条約の締結について承認を求めるの件等について、みんなの党を代表して質問いたします。(拍手)
 子供の連れ去り案件というのは、国内、国外を問わず数多く発生していることは周知の事実です。
 私自身も、弁護士として仕事をする中で、突然子供を連れ去られてしまい、本当につらい思いをしている方にお会いしたことがあります。また、一方的に連れ去られ、もう永遠に会えない、このつらさから、自分で命を絶つ決断をされる方すらいるという話を伺ったこともあります。自分の子供に会えなくなる状況というのは、私も二人の娘を育てる立場ですから、想像するに余りあります。
 一九八〇年にハーグ条約が成立し、既に世界で八十九カ国が締結済み。世界の主要国であるG8諸国の中でも、未締結の国は日本だけ。子供の連れ去り問題の取り組みにおいては、非常に世界から取り残された状況です。この状況を改善する上で、日本がハーグ条約を締結することは、非常に大きな一歩です。
 しかしながら、その一方で、やむにやまれぬ事情から、子供を連れて日本に戻ってくるという決断を迫られた方も少なくありません。子供のためを思えばこそ、そのような決断をした方々の思いを理解することも、また重要です。
 この問題は、その両者の思いをしっかりと受けとめていくことが大切ですが、子供の奪い合いという不幸な結果を避けるためにも、いかに処遇することが子の福祉に最も合致するのかという観点、これをしっかりと持つことが最も重要であると考えます。
 ハーグ条約の前文にも、「子の監護に関する事項において子の利益が最も重要である」と明記されているところではありますが、ハーグ条約においては、子の福祉という観点が中心に据えられているのかについて、まず伺いたいと思います。
 また、ハーグ条約を締結したとしても、それで全て問題が解決するわけではありません。
 まず、近時、国際結婚の数が増加するにつれ、アジア諸国との間で国際的な子供連れ去り事案の件数は増加しています。しかしながら、アジア諸国の中でハーグ条約を締結しているのは、わずか四カ国。ハーグ条約未締結国との間で子供の連れ去り事案が起きることも数多く想定されます。その場合に備えて、政府として何らかの対応策を講じていらっしゃるのでしょうか。
 また、日本において共同親権が認められていないことから生じる問題もあります。
 例えば、アメリカでは共同親権が認められているため、アメリカから無断で子供を連れ去ってきたときには、アメリカの共同親権者から容易に子供の連れ戻しというものを求められてしまいます。これに対して、今の日本の制度では、離婚後に無断でアメリカに子供が連れ去られてしまったときは、日本に残された親は、何の権利もなく、子供を取り戻せない、そして会えないという結果になりかねません。
 このような片務的な結果を認めていくのか否か、これはまさしく共同親権を認めるか否かにかかわってくる問題ですが、この問題についての見解を伺います。
 他方で、子の福祉という観点からは、ただ単に子を戻せばよいということではありません。ハーグ条約十三条において返還拒否事由が規定されていますが、具体的に、どのような場合に返さなくてもよいのか、しっかりと定めていくことが重要です。
 この点、いわゆるDVの被害が子に生じている場合に返還拒否するのは当然のこと、配偶者に被害が生じている場合でも、そのような家庭内で子供を育てることは、それだけで児童虐待とも言い得る状況なのであって、そのような家庭に子供を戻すべきか否か、これを考えなければなりません。
 配偶者にDV被害が生じる場合に子の返還拒否をすることを認めるか、見解を伺います。
 また、この問題を考える際に、現在の家庭裁判所の実務のあり方を見直す必要もあります。
 日本の家庭裁判所では、残念ながら、事実認定に難がある場合も少なくなく、母方の言い分を無批判に採用する傾向にあることも否定できません。DV冤罪の可能性を含め、家庭裁判所の事実認定の精度を上げていかなければ、安心して裁判所に判断を委ねることはできません。家庭裁判所の事実認定の精度を上げるため、その取り組みについて見解を伺います。
 さらに、国内においては、子供の連れ去り問題に対処するため民法第七百六十六条が改正されましたが、その運用においては法改正の趣旨が徹底されておりません。
 家庭裁判所の実務を前提にすれば、まず子供を連れ去れ、もう一方の親から引き離せと指導し、金もうけをする弁護士がいると言われます。
 というのも、今の家庭裁判所では、既成事実を追認し、子供を連れ去った親に親権、監護権を与える傾向が強くあるからにほかなりません。これが、子供を連れ去った方が勝ちというような、拉致司法と国内外で批判される実態です。民法七百六十六条が改正された今でもこのような対処法がまかり通っているのは、まさに家庭裁判所の実務上の対応が間に合っていないことの証左です。
 今のままハーグ条約を締結しても、子供の連れ去り案件への対応という意味では、国内外でダブルスタンダードとなってしまいます。今まで泣き寝入りをしていた親を救うためにも、ハーグ条約の締結を機に、家庭裁判所を改革し、事実の認定を柔軟にし、家庭裁判所裁判官等に対して、改めて、国内の民法第七百六十六条、この立法趣旨の徹底を図るべきと考えますが、この点の見解を伺います。
 みんなの党は、子の福祉の確保という観点から、この問題について、引き続き全力で取り組んでまいります。
 御清聴ありがとうございました。(拍手)
    〔国務大臣岸田文雄君登壇〕

国務大臣岸田文雄君) 三谷議員にお答えいたします。
 ハーグ条約と子の福祉についてお尋ねがありました。
 御指摘のとおり、ハーグ条約は、子の利益を最重要視するという基本理念を前文に掲げ、子の福祉という観点を中心に据えた条約です。
 国境を越えた不法な連れ去りによる一番の被害者は、子自身です。
 ハーグ条約は、子の監護に関する事項を決定するための手続は、子がもともと居住していた国、すなわち子がなれ親しんできた生活環境がある国で行うことがその子にとって最善であるとの考え方に立って、まずは、子が不法に連れ去られた状況の原状回復を図るものであり、今や、これが国際的なルールとして確立しています。
 また、ハーグ条約においては、返還により子の心身に害悪を受ける重大な危険がある場合などの一定の場合には、子の返還を拒否できるものとされています。こうした観点からも、ハーグ条約は、子の利益を最重要視した条約であると言えます。
 次に、アジア諸国ハーグ条約未締結国との間での子の連れ去り事案への対応についてお尋ねがありました。
 我が国としては、子の連れ去り等をめぐる問題が生ずる可能性が潜在的に高いとも考えられるアジアの国々を初めとして、ハーグ条約未締結の国々との間で、今後、本条約締結の重要性について協議を行っていきたいと考えております。
 また、ハーグ条約未締結国との間で生ずる個別の事案については、それぞれの国内法令に従って友好的な解決が図られるよう、政府として可能な限り支援を行っていきます。
 今後とも、例えば、個別の事案について両国間で情報の交換を行ったり、両国の協力のもと、面会交流の実現に向けた支援を行うなど、困難な状況に置かれた子の福祉を重視することを基本としつつ、本件問題に引き続き取り組んでいく所存です。(拍手)
    〔国務大臣谷垣禎一君登壇〕


国務大臣谷垣禎一君) 三谷英弘議員にお答え申し上げます。
 まず、離婚後の共同親権制度の導入についてお尋ねがありました。
 離婚後の共同親権制度の導入につきましては、賛否の意見が分かれているところであり、実際にも、離婚に至った夫婦間では意思疎通がうまく図れず、子の養育監護に必要な合意が得られないなど、かえって子の利益の観点から望ましくない事態が生ずるおそれもあることから、慎重に検討する必要があると考えております。
 次に、配偶者に家庭内暴力の被害が生じる場合の子の返還拒否についてお尋ねがありました。
 ハーグ条約及び本法律案においては、子の利益の観点から返還拒否事由が定められていますが、配偶者が家庭内暴力の被害に遭ったことをもって直ちに子の返還拒否事由に該当するものとはされておりません。
 しかし、具体的事案において、配偶者に対する家庭内暴力によって子の心身に悪影響を及ぼし、子を耐えがたい状況に置くこととなる重大な危険があると認められる場合には、裁判所は子の返還を拒否することになります。
 次に、家庭裁判所の事実認定についてお尋ねがありました。
 家庭裁判所の手続においては、当事者の手続保障の観点から、当事者双方に十分な主張や裁判資料の提出の機会を与えるとともに、必要に応じて裁判所が職権で裁判資料を収集することとされており、家庭裁判所は、一般論としては、これらの主張や裁判資料に基づいて、適切に事実認定を行っているものと承知しております。
 最後に、民法第七百六十六条の改正の趣旨の周知についてお尋ねがありました。
 民法第七百六十六条は、離婚の際に親子の面会交流や養育費の分担について取り決めることが子の利益の観点から重要であることに鑑み、改正がされたものであり、引き続き、その趣旨を広く一般に周知徹底してまいります。

 

 相変わらず、大臣の答弁は当たり障りのないもの。一方で、三谷議員の質問はさすが!弁護士として実務経験を積んできたからこそ、現場の実態がよくわかっている。弁護士であっても、実務経験が浅い国会議員は、問題意識すら持てません。三谷議員の今後のご活躍にますます期待したい。

【第189回国会】参議院法務委員会 第3号 平成27年3月26日

参議院法務委員会

共同親権」を取り上げた国会会議録を読んでみました。


登場人物:真山勇一 参議院議員(維新の党)

     上川陽子 法務大臣

     

真山勇一君 ありがとうございました。
 民法改正、先へ進めたいと思うんですけれども、その改正の課題の中に夫婦関係と同時に親子関係をめぐる問題というのがあるので、これをちょっと取り上げたいと思うんですが、婚外子は、去年の民法の改正で相続の部分が差別撤廃されましたね。子供は婚内子であろうと婚外子であろうと平等であると、相続に関してはそういう法改正がなされたということで、これやはり民法の中では大変私は画期的な改正であったというふうに思います。こうしたところから少しずつやはり時代に即した法改正というのが行われていく、その一つの大きなきっかけにもなっていくものでないかなというふうに思っています。
 ただ、その一方で子供の親権をめぐる改正というのにも課題を指摘されている部分があるんですね。これは、要するに親権の問題で、日本は離婚しますと単独親権になってしまうんですけれども、共同親権という考え方もどうなのだろうかなという声が出てきております。
 離婚というのは、最近は三組に一組が離婚するんだというふうにも言われているくらいで、だから大変離婚が多いんですけれども、私は、その中で特に、例えば単独親権、片親ということになると、今非常に問題になっていることで子供の貧困率というのがありますね。
 この子供の貧困率というのはどういうことからこういうことが起きるのだろうかなと。いろいろな原因はあるというふうに思うんですが、OECDの調査によると六人に一人と言われている。これがさらに、調査によると、一人親世帯の貧困率ということになるともうぐんと上がって五四・六%、つまり二人に一人が貧困であるというふうな統計が出ているわけなんです。
 この貧困のぎりぎりの境界というのは、年間所得が百二十二万円というふうにも言われていますけれども、本当にこれ一人だって百二十二万大変なのに、つまり一人親世帯ということだから二人いるわけですから、その二人、お父さん、お母さん、あるいはおじいちゃん、おばあちゃん、あるいはその保護者等ということもあるでしょうけれども、これはなかなか大変だというふうに思うんですよね。
 この共同親権というのは、親が例えば離婚しても両方で面倒見ようということを、これなかなか話合い難しいんですが、そういうやはり単独よりも共同ということならば話し合えるということが強いと思うんですけれども、この共同親権については大臣はどういうふうにお考えでいらっしゃいますか。

 

国務大臣上川陽子君) 生まれたお子さんの利益ということについては、これは大変大事な点であるというふうに私自身が強く考えているところでございます。
 現行の民法の下におきまして、先ほど委員の方から御指摘ございましたけれども、父母の婚姻中につきましては子供は父母の共同親権に服するということでございます。そして、父母が離婚をする際にその一方を親権者と定めなければならないと、これが現行民法の規定ということでございます。子供の利益という観点から見ますと、父母の離婚後も両親が適切な形で子の養育に関わるということにつきましては、先ほど申し上げたとおり、非常に重要なことだというふうに認識しているところでございます。
 ただ、委員から共同親権についての制度導入というようなお話もございましたけれども、このことにつきましては国民の皆さんの間にも様々な御意見があるという状況でございまして、実際に離婚になるというような御夫婦間の中でもなかなか親同士が意思疎通が図れないというようなことがございまして、子の養育についての考え方がまとまらないということで合意がなされないというふうなケースが非常にあるということもございまして、やはりそれぞれの御夫婦の中でのいろんな状況を踏まえて子の養育監護につきましても必要な合意を適時適切に図れないというふうなことになりますと、かえって子供さんの利益の観点から望ましくないというような事態も生ずることになる、こういうことも実は指摘されているところでございます。こうしたことも踏まえまして慎重に検討をする必要があるのではないかというふうに考えております。

 

真山勇一君 私は、やっぱり単独親権、共同親権といったときに、何というんですか、子供の立場が、何か全く別に置いておいて夫婦のことだけのことを考えるというふうな感じにどうしても受けるんですね。これだけ今どんどんどんどん社会的な情勢で離婚が増えているんだったらば、離婚が増えてもやっぱり子供にとって親は親、父親は父親だし、母親は母親なんですから、やはり親ということも大事にして、子供に大事にしてあげなくてはいけない。
 やはり子供の気持ちというのは、この共同親権、単独親権という言葉からいうと非常に冷たくて、何か子供のことをそっちのけにして親が子供を見る権利をどうするんだということしか感じられないというところがどうも気になります。これから新しい時代で、子供が会いたくても会えないというようなそういう状況とか子供が離婚の犠牲になるということじゃない方法というのも、これからやはり法的に考えていかなくちゃいけないのではないかというふうに思っております。
 ちょっとほかにも質問させていただきたいということで用意したんですが、済みません、時間になりましたので、またの機会に質問させていただきたいと思います。
 ありがとうございました。

 

平成27年(2015年)は、もう今から8年前。やっと共同親権制の導入を前提にする議論が始まった。反対している人もいるけど、あともうちょっとかな??

【第186回国会】参議院厚生労働委員会 第9号 平成26年4月15日

参議院厚生労働委員会

共同親権」を取り上げた国会会議録を読んでみました。

 

登場人物:大沼みずほ 参議院議員自民党

     赤石清美 厚生労働大臣政務官自民党

 

○大沼みずほ君 ありがとうございます。
 是非しっかり対応していっていただければと思います。
 また、四月の一日よりハーグ条約が発効となりました。日本では、単独親権といって、夫か妻、どちらか一方が親権を有することに法律上はなっておりますし、社会一般でもそのような決め事が子供のためになると考えられてきたように感じます。現在でもその考えは強いわけで、実態としては母親が親権を持つことが一般化しておりますけれども、欧米では共同親権が認められ、離婚後も両親との関わりが子供の発達に重要であるという認識がございます。母子家庭の子供、また父子家庭の子供が、自分の母、父に遠慮して、例えば母子家庭の子供であれば、別にお父さんに会いたいとは思わないんだよと言っても、実際に第三者を交えて父親と会って遊んだ後は、やっぱりお父さんと遊んでよかったと、また会いたいと、そう答える子供も多いようでございます。
 厚生労働省として、こうした離婚後の親子関係の維持のためにどのような行政サポートをされていらっしゃいますでしょうか。

 

大臣政務官(赤石清美君) 今、委員の指摘は非常に大事なところでありまして、私の事務所にいた秘書も離婚して、毎月一回しっかりと子供にお会いしに行っておりまして、そういう意味ではしっかりとした対応をしている場合もあると思うんですけれども、一般的にはなかなかそういうことはないということで、今、この面会交流については、養育費相談支援センター及び母子家庭等就業・自立支援センターにおきまして面会交流の相談に応じてきたところであります。
 これらに加えまして、平成二十四年度より母子家庭等就業・自立支援センターにおいて、父母間に面会交流の取決めがあり、かつ支援を受けることに合意がある場合に、地方自治体が面会交流の相談、日程調整、付添い等の支援を行う事業への補助を行っているところでございます。
 今後とも、一人親家庭の生活の安定と子供の健やかな成長のため、関係省庁と十分連携を図りながらこれらの施策を進めてまいりたいと、このように思っております。

 

○大沼みずほ君 ありがとうございます。
 今ちょっと政務官の御答弁の中で一つ気になった点は、お配りしました資料三にございますように、面会の取決めをしていない方の方が多うございます。取決めをしている方の面会を円滑にしていくというのは当然でございますけれども、面会の取決めをしていない、ここにやはり重点を置いて、ここの親子関係をどうしていったらいいのかということを考えていっていただければと思います。
 ハーグ条約の発効というのは、子供の連れ去りという問題だけではなくて、親同士の関係が崩壊しても、子供の健全な育成のためには両親が共に財政的にも子供を支え、定期的に面会し、成長を喜び、また確認することが重要という認識を一人親世帯のお父さんやお母さんにしっかり知らしめていくことが必要であります。もちろん、その離婚の原因がDVであったり、いろんな薬物依存とか、こういった場合は注意が必要でありますけれども、子供への扶養義務、それは父親、母親双方にありますし、協議離婚制度の在り方を含め、これは行政だけではなく政治側でもしっかりとやっていかなければならない議論であると思います。
 今、厚生労働省の方が行っている事業、私は正直、これからもっとしっかりとやっていくためには、政治の方がこの議論を加速化していかないといけないと思います。このハーグ条約発効を機に、政府広報なども通じて離婚後の親子関係の構築の重要性というものを訴えていただければと思いますし、まさに、取決めがなされていない養育費の問題、面会交流の問題、こうした問題を政治としてもしっかりと考えていかないといけませんし、行政としてもそれを前向きに検討していただければと思います。
 時間になりましたので、これで質問を終わらせていただきます。本日は誠にありがとうございました。

 

”みずほ”さんというお名前の方は、共同親権制の導入に熱心ですね。大沼みずほ参議院議員も鋭い観点で質問している。今は、議員は引退し、大正大学社会共生学部公共政策学科准教授をやっているようだ。大正大学と言えば、青木聡教授がいる。

【第185回国会】参議院法務委員会 第10号 平成25年12月3日

参議院法務委員会

共同親権」を取り上げた国会会議録を読んでみました。

 

登場人物:糸数慶子 参議院議員(無所属)

     谷垣禎一 法務大臣

     深山卓也 法務省民事局長

 

糸数慶子君 無所属の糸数慶子です。よろしくお願いいたします。
 民法改正について、まず一点目に、諸外国が婚外子差別を撤廃した理由についてお伺いをいたします。似たような質問もこれまでありましたけれども、確認をする意味で改めて伺います。
 婚外子差別撤廃や選択的夫婦別姓導入の民法改正について、諸外国の事例や国連の各人権機関から勧告を受けて法改正を求める根拠に挙げることに否定的な意見が見受けられます。しかし、諸外国が差別撤廃をしてきたのには、理由というか背景があるのではないかと思います。日本が最初にお手本にしたフランス民法は、婚外子への相続差別規定や嫡出概念、また嫡出用語を完全に撤廃しました。ドイツも同様に段階的に差別を撤廃しています。これらの国々が差別を撤廃したことには何か理由があると思いますが、その背景や理由を深山政府参考人にお伺いいたします。

 

○政府参考人(深山卓也君) フランスあるいはドイツでの改正の背景事情の詳細を承知しているわけではございませんけれども、やはり法の下の平等という各国共通の人権規定との関係、それから、先ほど参考人もおっしゃっておられましたけれども、児童の権利条約に各国が批准をしたことなどが背景として影響していると思います。

 

糸数慶子君 ただ単に諸外国が法改正をしているから改正すべきと言っているわけではありません。条約に加盟した締約国の責務を果たし、国内法を整備したということだというふうに思うわけですが、一方、日本は条約に入っても条約実施義務を果たしていないということが、国連からこれだけ多くの勧告を受けたことでも明らかになっています。
 次に、事実婚夫婦の単独親権についてお伺いをしたいと思います。
 これは、十一月二十八日の委員会で、父母が事実婚で一緒に子供を養育している場合には共同親権にすべきではないかという私の質問に対して、谷垣大臣は、必ずしも不合理な規定とは考えていないと答弁をされました。昨年四月に施行された虐待防止のための親権の一時停止等の民法改正では、子の監護について必要な事項の例として、父母との面会交流や子の監護に要する費用の分担が明示されるとともに、父母がその協議で子の監護について必要な事項を定める場合には、子の利益を最も優先して考慮しなければならないと規定されました。
 事実婚の夫婦が一緒に子供を養育している場合には共同親権が子の利益に資するのではないかというふうに思いますが、谷垣大臣に再度お伺いしたいと思います。

 

国務大臣谷垣禎一君) 糸数委員がおっしゃったように、十一月二十八日ですか、委員会で、必ずしも不合理な規定ではないという答弁を申し上げたわけでございますが、そのときのあるいは繰り返しになるかもしれません。民法上、父母の婚姻中は父母が共同して親権を行使すると、それから、嫡出でない子の場合には母又は父が単独で親権を行使するというふうに規定されているわけですが、こういう規定の背景にありますのは、民法が法律上の夫婦とその間に生まれた嫡出子から成る婚姻共同体というべきもの、それを基礎として親族間の様々な法律関係を規律していこうという、その表れだと私は考えているわけでございます。
 事実婚の場合は、今、糸数委員もおっしゃいましたけれども、まさに実態は、何というんでしょうか、事実婚の実態が極めて、事実婚の定義自体が実は相当難しいんですね。極めて、法律婚とは少しも違わないような実態を備えているものももちろんあると思いますが、他方、子の父母である男女の結び付き、あるいは生活状況、これは様々でございます。ですから、事実婚という言葉が定義しにくいのと同様に、一定の状況を前提とした規律に親しみにくいところがございます。
 ですから、事実婚に一律に父母の共同親権を認めるということは、子供の養育監護について必ずしも実質的に判断ができないようなことを生むおそれもないわけではない、子の利益の観点からもそういうことが懸念されるのではないかというふうに私は思っておりまして、以上のようなことから、前回申し上げたような御答弁をさせていただいたということでございます。

糸数慶子君 今、前回と同じようなお答えがあったわけですけれども、昨年の四月に施行された虐待防止のための親権の一時停止等の民法改正において、やはりこういう子の監護について必要な事項の例として、今私は、できればそういう事実婚に関してもやはり共同親権が子の利益に資するのではないかというふうなことでお伺いしたわけですが、これはまた改めて別のときにもっと議論をさせていただきたいというふうに思います。

 

今、共同親権国賠訴訟においても、司法から立法府に対して、「立法不作為」・「条約遵守義務を果たすこと」が指摘されている。それにしても、谷垣氏は頭が固い人なんだなあ。

 

【第185回国会】参議院法務委員会 第9号 平成25年11月28日

参議院法務委員会

共同親権」を取り上げた国会会議録を読んでみました。

 

登場人物:糸数慶子 参議院議員(無所属)

     谷垣禎一 法務大臣

 

糸数慶子君 誠実に是非対応していただいて、ちゃんとした成果を出していただきたいというふうに思います。
 次に、事実婚夫婦の単独親権について伺います。
 婚外子の場合、父母どちらかの単独親権となっています。父母が事実婚で一緒に子供を養育していても共同親権は認められていません。父母の片方にしか親権がないことは、親権のない親にとってはつらいことだと思います。事実婚法律婚と同等に扱うようになっている中、事実婚には共同親権を認めないことについて合理的な理由があると思えないのですが、改めて谷垣大臣の御見解を伺います。

 

国務大臣谷垣禎一君) 民法上、父母の婚姻中は父母が共同して親権を行使すると、それから、嫡出でない子の場合には母又は父が単独で親権を行使すると、こういう規定の仕方になっております。こういう規定をしているのは、民法が法律上の夫婦とその間に生まれた嫡出子から成る婚姻共同体、これを基礎として親族間の様々な法律関係を規律していこうという基本的な考え方を取っている反映だろうと私は思うんです。
 それで、それに対して事実婚の場合は、子の両親、父、母、この結び付きや生活状況というのは極めて様々であろうと思います。したがって、一定の状況を前提とした規律に親しみにくい面があるのではないか。今、共同親権とおっしゃったけれども、本当に共同親権というのがうまく機能していく状況にあるのかどうかというようなことが、単独親権とされてきた、そういう規定となっている考え方の背景にはそういうことがあるのではないかと思っております。
 それで、これをどう考えていくかというのはいろいろ議論があろうかと思っておりますが、離婚した場合にも共同親権にせよというような御議論が今、おっしゃる方があることも事実でございます。可能性としてはいろんなことがあり得ると思いますが、現在のところ、私は、そういう基礎を考えますと、必ずしも不合理な規定だというふうには考えておりません。

 

糸数慶子君 事実婚夫婦にも法律婚と同様に様々な行政サービスが提供され、配偶者として広く認められていることもあるわけで、ある意味、親として認めていないということになります。諸外国でも共同親権が認められており、この規定、単独親権は早急に改正されるべきだというふうに考えます。

 

事実婚の場合も課題がありますね。

【第183回国会】参議院法務委員会 第11号 平成25年6月11日

参議院法務委員会

共同親権」を取り上げた国会会議録を読んでみました。

 

登場人物:磯崎仁彦 参議院議員自民党

     深山卓也 法務省民事局長

 

○磯崎仁彦君 まさに大臣おっしゃるように、いろんな事案、それぞれの原因等があると思いますので、その事案事案に適切な判断をということかと思います。
 次の質問でございますけれども、ハーグ条約は国境を越えた不法な連れ去り、留置があった場合に原則として子を常居所地国に戻すということですので、国内の親子法制とは基本的に切り離して今回は考えていると、これが基本的な考え方だと思います。
 ただ、とはいえ、やはり子供が外国に連れ去られて日本の方に連れ帰ったような場合には、最終的にどの親が子を監護するかということについては、それが子の利益にかなうかという判断は日本の法律に基づいて最終的には決定をされるということになろうかと思います、日本に子を返還をされた場合にはですね。その場合には、これも早川参考人が言われていたとおり、子の監護に対する本案の処理についても、当然のことながら、外国から日本に連れ戻した場合には、日本において誰がその監護を行うのがふさわしいのかという、そういう本案の審理が行われる。
 当然のことながら、外国も、日本の法制がどうなっているのかということについては、これまで余り注目がされなかった中で、やはりハーグに入ってそういう戻しというものが日本にも発生をするということになると、いろんなネットワークを通じて日本の法制度の在り方というものが海外にも知れるようになると。そうなると、日本の国の法制というのは基本的には日本の国で考えるとはいいながら、いろんなやはり何といいますか、海外の目にさらされることも多くなるというのが現実かと思います。
 そういったことに対して、おのずから、好むと好まざるとにかかわらず、日本のいわゆる親子法制の在り方というものが注目を浴びて、どうするのかというのが検討の土俵にのってくる可能性が多分にあろうかと思いますけれども、この点についてはどのようにお考えでございましょうか。

 

○政府参考人(深山卓也君) 今委員御指摘のとおり、日本の親子法制がハーグ条約の加盟に伴って諸外国から注目されるようになるというのは御指摘のとおりだと思います。
 それで、離婚後の親子法制は、日本の場合には単独親権ということで、ほかの先進国の多くとやや異なっております。このような点も、現在、法務省でも諸外国の法制調査などをして共同親権制度の導入についての基本的な検討を開始しておりますけれども、ますます諸外国からこの親子法制の違いについての指摘がされるという場面が増えるのではないかと思っております。

 

まさに、国連勧告をはじめ、海外からも指摘されている。いま、変えずして、いつ変える!!

【第183回国会】参議院法務委員会 第9号 平成25年6月6日

参議院法務委員会

共同親権」を取り上げた国会会議録を読んでみました。

 

登場人物:前川清成 参議院議員民主党

     松山政司 法務副大臣

     明尾雅子 一般社団法人レフト・ビハインド・ペアレンツ・ジャパン代表理事

     磯崎仁彦 参議院議員自民党

     早川眞一郎 東京大学大学院 総合文化研究科 教授

     魚住裕一郎 参議院議員公明党

     真山勇一 参議院議員みんなの党

     井上哲士 参議院議員日本共産党

     吉田容子 弁護士 日本弁護士連合会両性の平等に関する委員会特別委嘱委員

 

前川清成君 大臣は弁護士でもいらっしゃるのでそのような形式的なことをおっしゃると。例えば訴状で、私が民事訴訟法に被告の住所は書かなくてもいいって書いてあるんだと言って裁判所の窓口に持っていったら、岡さん、きっと、おまえあほかって言われますよね。やっぱり実際のこれからの手続を念頭にした議論をしていただいたらどうかと思いますし、民事訴訟だって、例えば公示送達のように相手方の住所が分からないようなケースも想定してやっているわけですから、全体としてのスキーム、私は大事じゃないかと思います。
 いずれにしても、ここまで五分ぐらいで終わるのかなと思っていたんですが、もう四十分過ぎてしまいましたので、早くメーンディッシュに行きたいと思うんですが。
 日本法は、離婚後、単独親権というふうに決めています、日本民法の御案内のとおり八百十九条ですが。世界的には離婚後も共同親権の国が多いのか、特に条約に加盟する主要国においてはどうなのか、これも明らかに通告をしておりますので、副大臣、お願いします。

副大臣松山政司君) 現在、ハーグ条約の締約国数でありますが、八十九か国でありますけれども、当省にて今現在把握しておりますのは八十八か国でございます。残り一か国については調査中でございますが、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、カナダ、オーストラリア等の主要国を含む七十四か国において、離婚後に両親が共同で親権を有することが認められる制度が採用をされております。

 

 

参考人(明尾雅子君) 一般社団法人レフト・ビハインド・ペアレンツ・ジャパン代表理事の明尾雅子と申します。
 私自身、元夫に七年前にカナダから息子を日本に連れ去られ、その後、団体を立ち上げました。私の団体は、主に海外から日本に子供を連れ去られた親たちが子供に会えるようにサポートする活動を長年行ってきました。国会議員の先生方、日本が世界から子供拉致帝国又はブラックホールという不名誉な呼ばれ方をされている事実を御存じでしょうか。
 資料一を御覧ください。私たちが活動を通じて分かったこと、すなわち行政、司法が異常なまでに親子の引き離しを行っている実態について、まずお話ししたいと思います。
 子供を連れ去られた別居親が子供に会おうとしても、日本の警察が不当に介入して会えなくなるケースが多くあります。ここでは二つの例を紹介いたします。
 最初の例は、フランス人の父親が娘の誕生日にプレゼントを渡すため、わざわざフランスから日本を訪れたケースです。娘の家を訪れてドアホンを押したところ、たった五分で埼玉県警の六台のパトカーがやってきて、十人の警察官で父親は取り囲まれました。このため、娘に会うことはもちろん、プレゼントを渡すことすらできなくなりました。もちろん、父親は一切違法なことはやっておりません。
 もう一つは、日本人のケースです。父親は親権者であり、家庭裁判所の審判に従い、家庭裁判所調査官の天下り機関であるFPICの立会いで子供と面会していたところ、母親の虚偽の通報を真に受けてやってきた五人の警察官に子供の面前で拘束され、警察署に連行されるということが今年一月に起こりました。もちろん彼は違法なことは一切やっていないため直ちに釈放されましたが、愛する父親が警察官に連行される姿を面前で見せ付けられた子供には一生消えない心の傷を残したと思います。少しでも子供の気持ちを察すれば、全く非のない父親を子供の面前で捕まえることなどできなかったはずです。
 この父親は元々単独で三歳の息子を育てていたのですが、別居中の母親によって通っていた保育園から子供を誘拐されました。連れ去った者勝ちのルール、すなわち継続性の原則により、家庭裁判所は子供の父親への返還を認めませんでした。しかも、彼が子供との面会交流の審判を勝ち取るまで、連れ去られてから一年九か月も掛かったのです。審判内容は、親権者でありながら月一回二時間、第三者機関の立会いでというものです。
 別居親が面会交流を家庭裁判所に申し立てても、そのうち審判で実際に面会交流で認められるのは僅かに半分です。また、審判で認められても、面会時間が一か月に一回二時間程度というのが標準的なものだと言われています。これは、子供の生活時間の僅か〇・三%にしかすぎません。欧米諸国では離婚後も子供が父母の間を行き来しながら半分ずつ暮らすのを原則とするのと対比すると、日本の家庭裁判所は親子の分離を前提に運用しているとしか考えられません。警察署に面会交流を妨害された父親は、子供に会うためには再びゼロから家庭裁判所での調停を始めなければなりません。それも守られる保証もないのです。
 子供との面会を妨害するのは警察だけではありません。学校や保育園も同様です。学校の行事に参加しようとしても、子供を連れ去った同居親が参加に反対すると、親権者であっても行事に参加できないのが通常です。校長先生が敷地から出ていけと言うのです。また、子供の情報の開示を教育委員会に求めても、子供の情報は開示されません。
 資料の二ページを御覧ください。これは、私が親権者として子供の情報開示を求めた結果があります。ほとんどの事項が黒塗りされているのが分かるかと思います。信じられないかもしれませんが、連れ去りされると親権者であっても子供の情報からも遮断されてしまうのです。
 そして、行政による親子の引き離しの最たるものがでっち上げDVです。これは、警察に自分はDVの被害を受けたと相談すれば、警察はDVが本当にあったのかなかったのかを一切調べることなく子供の場所を隠してくれる制度があります。住民票の秘匿から始まって、子供の連れ去り親に生活保護費の支給、住居の世話、あるいは健康保険の加入など、一切の面倒を見てくれます。子供も保育園に確実に入れます。しかし、恐ろしいことに、子供は偽名を強要されることもあります。連れ去りをする親は子供を自分の持ち物と勘違いした身勝手な親だと思いますが、平気で偽名を強要するという虐待行為までもやってのけるのです。
 ところで、DV防止法のどこを見ても住民票を隠してよいなどとは書かれていません。住民基本台帳法では、本当にDVをしている親でもなければ、親が子供の居場所を捜すため住民票を取得する正当な理由があります。それを総務省局長らの通達だけで不可能としているのです。そのほかの支援措置も通達だけで行われています。オウム真理教の逃亡犯がこの支援制度を悪用して健康保険に偽名で加入していたことは記憶に新しいところです。
 最大の問題は、自称DV被害者が支援措置の申出を取り下げない限り永遠に支援措置が続けられるということです。
 裁判を通じてDVがなかったことが明らかになった親も多くいます。しかし、これらの場合でも子供の居どころは秘匿にされたままです。通達だけでなされたこれらの支援措置を解除する方法が全くないのです。現場の警察官の中には、でっち上げDVだと分かっていても上からの命令なのでせっせと親子の引き離しに加担させられているとはっきりおっしゃる方もいらっしゃいます。これは明らかな欠陥制度であり、直ちに改善していただくことを強く求めたいと思います。
 ところで、海外から日本に子供を連れ去った母親は必ずと言っていいほど夫のDVを主張しますが、海外のDV防止法は極めて厳格に運用されており、被害者は徹底的に保護されます。仮に夫から暴力を受けたのであれば、警察はDVがあったことを確認し、DVをした夫を拘束し、保護命令を出します。二十四時間体制で対応してくれます。また、DVシェルターも充実しています。したがって、仮にDVを受けたのなら現地でDV保護措置を受ければいいだけで、子供を連れて日本に逃げてくる必要はないのです。これは私がカナダでDVシェルターに入った経験からはっきり言えることです。
 最後の資料なんですけれども、最後じゃないですね、四番目ですね。これは、私がDVシェルターに入ったときに、英語のまず一ページ目、その次に訳したものが載っております。最後の方ですね。
 実際、アメリカ政府は、アメリカから日本に連れ去られたケースでDVは確認されていないと明言しています。DVに対しては、海外の制度のように加害者を拘束しないと根本的に解決しないのです。これに対して日本のDVの支援措置は、子供を連れ去るためのあらゆる支援を行うという制度となっており、かつ通達だけで曖昧な運用が行われているため、連れ去り親にとって、自称被害者を名のっただけで悪用が容易な制度となっていることを是非御理解いただきたいと思います。
 これまでの衆議院における審議を見ておりますと、日本は、最初の子供の連れ去りは不問にされるが、連れ戻すと逮捕される。そして、家庭裁判所はほぼ例外なく連れ去った方に親権を与えるということは明らかにされたと思います。それだけで止まらず、私が今述べたように、海外から連れ去られようが日本国内で連れ去られようが、一度連れ去られると日本の行政や司法が我が子に接触することを妨害してきます。そして、でっち上げDVのように、子供の連れ去りを正当化し、子供たちを隠す制度まで用意しているのです。残念ながら、国家ぐるみで子供の拉致を行っていると言われても仕方がないように思われます。私は、衆議院での審議では、日本に連れ去られた子供を返還させるかどうかの議論に終始し、肝心な点が議論されてこなかったことを残念に思います。
 ハーグ条約国内実施法について、これまで議論されてこなかった二つの論点について次に述べたいと思います。
 第一は、日本から海外に子供を連れ去られたケースです。
 最近は日本から子供を連れ去られるケースも徐々に増え、海外から日本に連れ去られるケースに匹敵するぐらいの数になっています。実は、この場合、連れ去られた親にとって最も過酷な運命が待ち受けているのです。
 イギリス人の夫に子供をイギリスに連れ去られた母親のケースをお話しします。このケースでは、イギリスの裁判所は、ハーグ条約の考え方に沿って子供を日本に返還するように命じました。その結果、日本の家庭裁判所で子供の親権などが争われることになったわけです。しかし、裁判所は、母親が求める面会交流の申出を既に却下し、間もなく母親から親権を奪い、養育費だけを支払わせるという決定を下そうとしています。その結果はお分かりかと思いますが、母親は養育費を払い続け、無権利者となった母親は子供と永遠に会えなくなることを意味します。イギリスにとどまっていれば共同親権ですので、母親と子供が引き離されることはなかったのです。
 こういう事態となったのは、日本が離婚後、単独親権制度を取ることと、同制度を背景に、連れ去った者勝ちの判断をする家庭裁判所の運用があることが原因です。ハーグ条約の加盟と共同親権とはまさに車の両輪であり、一方が欠けると、このケースのように親子の引き離しが必然的に起こってしまうのです。
 ちなみに、日本の家庭裁判所における母親の代理人は法制審議会で国内実施法の起草にもかかわっています。その弁護士は、この母親が過酷な状況に置かれているにもかかわらず弁護士として何もできることはないこと見ても、いかに法制審議会で議論がされていないかとよく分かります。
 第二は、ハーグ条約では子供と接触する権利、すなわち面接交流権が権利として保障されていることです。
 ハーグ条約第二十一条を資料として入れています。資料の三ページを御覧ください。同条第二項では、「中央当局は、接触の権利の行使に対するあらゆる障害を可能な限り除去するための措置をとる。」と書かれています。国内実施法では子供と接触する権利の保障に関する規定が完全に欠落していると考えます。先ほど述べたとおり、日本では、面会交流できるかは家庭裁判所の運用に委ねられ、権利として保障されているわけではありません。また、中央当局である外務省には面会交流の妨害を除去する権限は与えられていません。むしろ、警察を始めとする諸機関が面会交流を妨害している実態もさきにお話ししたとおりです。
 ハーグ条約に加盟しても子の連れ戻しに関する規定が過去に遡及しない以上、既に子供を連れ去られた親にとって子供と接触する権利が唯一かつ重要な権利です。それゆえ、子供と接触する権利を曖昧なまま置いておくのではなく、法律に権利として明確化し、それが妨害されたときの救済措置、すなわち実効性の付与を強く定めておく必要があるはずです。
 日本も一九九四年に批准している児童の権利に関する条約では、子供が双方の親から分離されないことや、離れて暮らしている親子が定期的に直接に接触する権利を尊重することが定められていますが、私は全くと言っていいほど守られていないと思います。ハーグ条約の加盟以前に、児童の権利に関する条約に沿った家族法の改正と司法、行政機関の適正な運営を確保することこそがまず求められます。
 現在の日本では、社会の最も基本的単位である家族が司法、行政機関により解体させられている現場を、私たちの団体ではその活動を通じて見てまいりました。司法、行政機関が児童の権利に関する条約に規定されているような子供の利益を無視した誤った運用をしているとしたら、それを正すことができるのは法律だけであり、その意味で立法府の役割は極めて重要と考えます。
 先日、アメリカ議会下院の公聴会で、日本のハーグ条約の実効性に疑念の声が強く出され、議員から日本への制裁措置の適用を求める声もあったと聞いています。このような事態の背景の根源は、家庭裁判所の運用に委ねられることによって日本の親権制度が曖昧なままに放置されていることがあるとともに、共同親権制度、すなわち、いつまでも子供が両親により等しく育てられ、親がいつまでも我が子を育てる権利が明確に保障されていなかったことにあると思います。
 最後になりますが、本当に国会議員の皆様が日本の将来を考えておられるのなら、日本の将来をつくる子供たちの利益のために親子が引き離されることのないような親権制度に改めることを強く求めますとともに、これらのことを国会決議を通じて明確に意思表示をしていただくことを強く要望して、私の意見陳述を終わりたいと思います。
 御清聴ありがとうございました。

⇒明尾雅子氏の指摘は注目に値する。この指摘(子の連れ去り、面会交流の少なさ、学校園での別居親差別、虚偽DV)は現在もなお続いている社会問題である。数年前に亡くなられたことが残念。

 

○磯崎仁彦君 それからもう一点、恐らくいろんな日本の家族法も国際的な法にさらされてというお話があって、その中で、最後に明尾参考人ハーグと共同親権は車の両輪というお話がありました。
 早川参考人、例えば、これからこのハーグ条約、実際に運用されていく中で、日本の進むべき方向といいますか、それにつきまして、例えば共同親権ということも念頭に入れたそういう方向に向かっていった方がいいのか、それとも日本の今離婚後の単独親権ということも、これはもう全く別次元の話であって、何といいますか、ハーグが実際に運用されていく中でも、グローバルな中でも親権の在り方というのは、これは日本の独自の考え方として考えていくべきなのか、その共同親権の在り方、そっちの方向ということについてはどのようにお考えでございましょうか。

参考人(早川眞一郎君) 御質問ありがとうございます。それは大変難しい問題で、鋭い御質問だと思います。
 ハーグの条約に入ってこれをきちんと履行していく上では特に共同親権が必要というわけではないと、これは多分皆さん意見一致しているところだと思います。ただ、何といいますか、その背後にある考え方としては、子供は親が別れても両方の両親と接触を持ってやっていくのが正しいということでございますので、どちらかというと共同親権、実質法的には共同親権と整合性が強い、考え方としては整合性が強いんではないかと、ハーグ条約は、と思っております。
 しかし、そのことだけで日本の共同親権をどうすべきかということを決めるわけにはもちろんいきません。したがって、それはほかの要素も考えつつ慎重に検討していく必要があるだろうと思います。
 ただ、世界の潮流としては共同親権の方向へ動いていますので、やがては日本もそうなっていくのではないかというふうに個人的には予想しております。

共同親権は「世界の潮流」

 

○魚住裕一郎君 ありがとうございました。
 次に、明尾参考人にお願いをしたいと思いますが、先ほどハーグと共同親権は両輪だという話があったわけでございますが、今朝の外務省の答弁では、ハーグ加盟国八十九か国、そのうち一か国は調査中でございますが、八十八か国中七十四か国、アメリカは州によって変わるようでございますが、イギリスもドイツもフランスも共同親権だということのようでございまして、だんだん、このハーグによって国内手続の課題が世界にさらされるという意見もあったわけでございますが、そういうことでそういう方向性に行くんだろうなと、共同親権の方向に行くんだろうなというふうに私も思っているわけでございますが。
 取りあえず、今日は参考人が経験された中での御意見をお聞きしたいと思いますが、日本に子を連れ去られた外国人の親の支援を行っているわけでございますが、現在、未締結ということ以外に、外国人の親が日本の対応に不満を抱いているということはどういうことがあるのか。また、締結をした後も望まれる支援というものはどういうものがあるのか、御教示いただきたいと思います。

参考人(明尾雅子君) まず、アメリカからは非常に批判を受けております。というものは、まず、アメリカから日本に連れ去られた子供に関して、今までアメリカに連れ戻されたケースは一件もないということです。さらに、ここで問題になるのは、あとは、要は、連れ去られた後に捜そうと思っても、子供も奥さんにしても、配偶者の行方も分からなくなってしまうという事態が起こっております。ましてや、戸籍制度がありまして、戸籍は漢字ですので、アメリカ人なりなんなり英語の人たちが戸籍を入手するということも不可能に近いですし、そういうところにやはり不満がありまして、さらに、まず面会すらできないと、子供の居所も分からないと、そういう批判を外国から受けているのが現状ですね。
 そして、そこで障害となるのは、日本が単独親権制度を取っているということがやはりアメリカから、ほかの国から、ほかはほとんど共同親権ですので、そこが更に非常に温度差があるということになります。

 

 

真山勇一君 みんなの党真山勇一です。よろしくお願いいたします。
 参考人の皆様、本当に長時間でお疲れでございますけれども、よろしくお願いいたします。
 私、四人の方にお伺いしたいんですが、まず早川参考人から伺いたいと思います。
 先ほどもちょっと出ましたけれども、監護権、親権の話を伺いたいと思うんですけれども、早川参考人ハーグ条約の部会などにも参加されていて大変多角的に広いところからいろんなことを検討されているというふうに思います。私は、今回のハーグ条約の中で、国内実施法で問題になってくるのは、一つは子の監護権、親権の問題と、それからもう一つはやっぱりDVをどうするかという辺りが一番大きな問題、いろいろあるけれども、ここら辺が大きいかなというふうに思っています。
 早川参考人にお伺いしたいのは、例えば、先ほど監護権のことが出まして、日本は今単独親権ですけれども、共同親権の方になっていくだろうと予想されるということをおっしゃいましたけれども、例えば、外国なんかも見ても共同親権になったということはごくごく最近というふうに私伺っておりますが、やはり子供はどっちかの親のところにいるという方が昔は多かったということで、海外の国々も、やはり以前はかなり単独親権ということだったのが、ハーグ条約というのは三十三年前ですけれども、その辺りから徐々に共同親権になったというように伺っているんですが、外国がこういうふうにやはり単独親権から共同親権へ移ってきた。日本はやはり、今の時点でいろいろな政府の答弁聞いていますと、なかなか単独親権捨て難いと、そう簡単に共同親権には行かれないというまだ雰囲気が強いんですが。
 海外がどうやって単独から共同に移行するふうなこと、その過程で何かいろんな大変なことがあったのかどうかということと、日本がそれから学ぶべき、いずれやはり、早川参考人がおっしゃっているように、グローバルスタンダードでいえば単独親権から共同親権に移っていくのかなと、私もそんな気がしているので、移るに当たっての例えば何か障害とか、どういう辺りがなくなれば日本もできるかという、そういう早川参考人の御意見を伺いたいと思います。

参考人(早川眞一郎君) 御質問ありがとうございました。大変難しい問題できちんとお答えできないと思いますけれども、感想だけちょっと申し述べたいと思います。
 外国も、おっしゃったようにそれほど昔ではないんですね、比較的新しくて。なぜそうなったかというのは、これもまたいろんな議論があるところかと思いますけれども、やはり社会の情勢で、例えば男女のジェンダーの問題が背景にあり、それからやはり子供についての、子供の権利といいますか、あるいは児童心理といいますか、子供にとって何がいいのかということについての知見の変化といいますか発達があり、いろんな要素が絡まってこういうことになったんだろうというふうに思います。
 それで、日本と外国との違いの一つ、そう重要な違いではないかもしれませんけれども、例えば親権をもらえなかった父親、単独親権のときに親権をもらえなかった、まあ父親がもらえないことが多い、母親が単独親権になる場合が多いわけなんですけれども、父親たちの活動といいますか、父親たちが、自分たちも別れた後も子供と会い、あるいは子供と暮らしたいんだということを言う圧力団体が、日本にももちろんあるんですけれども、外国はそれが非常に強かったというふうに聞いております。なぜそれが強かったのかはまたちょっと難しい問題で、さらに、私はよく分かりませんけれども、そういうようにいろんな社会情勢があり、それで一気に変わってきたということだろうと思います。
 日本でどうなるかは予測は全く私には付きません。なかなか法はすぐには、一朝一夕には変わらないもので、各国の文化を背景にしておりますのでそう簡単には変わらないだろうと思うんですけれども、今回のハーグ条約で、先ほど申しましたけれども、言わば世界との家族法分野での交流というのはかなり強まりますので、そこでいろいろな海外の知見、刺激というのが入ってきて徐々に日本の中の意識も変わってくるのではないかという気が、やや希望的観測ではありますけれども、しております。
 したがって、私が生きている間かどうかは分かりませんけれども、そのうちには共同親権への動きというものが出てくるのではないかなというふうに期待しているところでございます。お答えになっていなくて申し訳ありませんけれども。

 

真山勇一君 ありがとうございました。
 最後に、明尾参考人にお伺いしたいんですが、もうまさに明尾参考人は、今いろいろなことを例を挙げて述べていただきましたけれども、レフト・ビハインド・ペアレントというのは、これ要するに置き去りにされてしまった親という、そういう意味だそうですね。その団体の今お仕事をされているということなんですが、明尾さんには、ですから、実際にそのまさに渦中の人なわけですね。
 伺うところによると、お子さんに会えないという状態というふうに伺っていますので、実際の当事者としてのその辺の、なぜそういうことになってしまったのか、御自分がという話、もちろんプライバシーの問題がありますのでお聞かせいただけるところで結構です。そういう話と、それから、御自分のケースの中で特にやはりこれだけは訴えたいということがありましたら、それをお話ししていただければと思います。

参考人(明尾雅子君) まず、私から、今思い起こせば、当時はハーグ条約という言葉も、七年前でしたので私自身も分かっていませんでした。元夫は無断で子供をカナダから日本に連れ去ったんですけれども、そのときも意味が分からなかったんですね。なぜ、子供が十一歳までカナダの学校に行って、カナダが好きだと言った子供を日本に連れ去ってしまったのか、それがどうしても不可解だったんですけれども、今ハーグ条約で問題になっていることで初めて分かったことは、日本の司法が要は彼にとって有利だったということですね。
 それは今、皆さん、私の周りにもいるんですけれども、まず連れ去った者が勝ちということです。それが母親でも、おなかを痛めた子供でも、連れ去った方に親権が行きますし、たとえ私が子供に会おうとしても、会わせてくださいと。ましてや、日本の今の面会交流の、今日述べましたように、実際に会えている人は半分以下ですね、お子さんに会えているのは。それで、会えるのは月一回二時間程度というのが現状です。私が今思うのは、それを知った上で元夫が日本に連れ去ったというふうに考えております。
 私としては、最後に国会議決を求めるのは、まず、でっち上げDV、それをやめていただきたい。なぜかといいますと、何の証拠もなくDVがありましたというふうに言うと、そこでまずDVが要は承認されてしまうんですね。承認されてしまったDVというのは、今度その解除の仕方がないんですね。それもずっと更新されるので、それが例えば裁判所で幾らDVがなかったというふうに証明されても、それはDVの措置をした本人がDVはこれはなかったということを認めない限り解除のしようがないということです。まずそれを国会議員の方にもお知らせしたいということと、あともう一つ、やはり今、子供を連れ去った者勝ちですね。一回連れ去る、例えば奥さんが実家に戻るということはそれは許されることですけれども、その奥さんから今度連れ戻すといったときには警察に逮捕されるというのが実情です。そして、面会交流に関しての強制化を求めます。そして共同親権。この四つを私から国会議決を求めるということで、終わらせていただきます。

 

井上哲士君 ありがとうございます。
 もう一点、吉田参考人にお聞きしますけれども、先ほど来ハーグ条約共同親権のことが話題になっておりますけれども、この点は吉田参考人、どのようにお考えでしょうか。

参考人(吉田容子君) ハーグ条約は御承知のとおり、不法な連れ去り又は留置があった場合に子を返還する、それによって国際裁判管轄を常居所地国に確保するという、そういう手続の条約であります。したがって、親子法制の在り方は本来、各締約国に委ねられていることで、別問題だというふうに思っています。
 日本で昨今、共同親権あるいは共同監護という議論があることは承知しておりますけれども、まず親権という言葉がありますけれども、オヤケンと書きますよね。だけど、今の民法の普通の教科書を見ますと、あれは親にとっては権利であり、むしろ義務である、義務の方の側面が強いんだよと、あるいは義務、責任といいますけれども、ということもありますし、その中身もどうなんだという議論がされています。だから、まず共同、共同という前に、まずその親責任、私は責任だと思いますけれども、そういうところを見据えてきちんと考えるべきなのかと思います。そういう意味でいきますと、今、共同親権あるいは共同監護という言葉、いろいろ言われていますけれども、その内容が使う人によって様々であって、はっきりしていないような気がします。
 それから、諸外国は共同親権だというふうなお話もありますけれども、これもいろいろ制度が様々ですし、それから、一回そういう制度をつくってみたけどちょっと具合が悪いなということで見直しをしている国も既にございます。
 さらに、弁護士の間でも賛成意見と反対意見、様々あります。
 それから、更に言えば、結局、係争案件、つまり裁判手続によって、つまり、法律の規定に従わなければ自分たちの離婚もなかなか決められない、そういう父母を想定せざるを得ないんですが、そのような方たちが子供の養育監護についてだけ協力し合えるのかというのは、私ども実務家の感覚としてはなかなか難しいと思います。とりわけ今日お話ししたようなDV案件はたくさんありますので、そういう場合には居所すらなかなか知られたら不安で仕方がないということになりますので、共同で監護するのは大変難しいと思います。
 ですから、法制度を論じるときに私は思うんですが、ある意味では理想論かもしれないんですが、理想論だけで論じるのはちょっとどうなのかなと、実際の法律の適用の結果、何が起こるのかということを具体的に想定、想像して、その上で慎重に考えるべきだというふうに思います。
 以上です。

⇒この時はすでに方針転換していたのですね。

【第183回国会】参議院外交防衛委員会 第4号 平成25年5月21日

参議院外交防衛委員会

共同親権」を取り上げた国会会議録を読んでみました。

 

登場人物:末松信介 参議院議員自民党

     平松賢司 外務省総合外交政策局長

     岸田文雄 外務大臣

 

○末松信介君 新しく当選された江島さんという議員と話していたら、地方議会でもやはり休憩取るんですよね。私は、議運の場でまた改めてそういった議論をしたいと思います。横道にそれました。
 ハーグ条約の子奪取案が質疑されて、本日採決ということになったわけでありますけれども、代表的な事件であるサボイ事件、これはもう大臣もよく御存じのとおりでありますけれども、米国では元妻による拉致事件、国外移送、これ略取事件ということで地元警察も元妻の逮捕状を取ったと。今度は、奪い返そうとしたこの子のお父さんが福岡県の方で未成年者略取の容疑で逮捕されるという、これ大変つらい話であったと思うんですけれども、こうした問題が解決できればなということを思うんですけれども。
 今年の二月の日米首脳会談で安倍総理も、このハーグ子奪取条約については加盟をしたいということをオバマ大統領に約束をされたわけでありまして、我々も大きな期待を寄せているところでございます。今G8で、この主要八か国で加入していないのは日本だけになってしまったということでございます。
 それで、私、要望なんですけれども、これは過去、ほかの先生方も御質問されたと思います。TPPとかRCEPとかFTAAP、非常にアジアとのかかわり合いが深くなってくると。アジアとのかかわり合いが深くなるということはアジアの女性との国際結婚も増える。結婚が増えるということは離婚も増えるということなんですけれども。特に日本人男性は中国とフィリピンの女性で七割近い方々が結婚されておると。そして、離婚も七割は中国とフィリピンの方であると。だから、こうした国々、方々が、当然フィリピン、中国がハーグ条約に加盟をしてもらわないと、今後を見通した場合には私は大きな意義を見出せないと思うので、その努力を是非お願いをしたいということを思います。
 この法案の中身はもうあえて申し上げませんけれども、欧米では共同親権が一応一つの理論になっています。日本では単独親権ということでありますから、日本では子供を一旦手放したら二度と会えないという、そういう考え方が大変強かったと思うんですけれども、日本は独自の家庭観と、これは文化のそういった意識があろうかと思うんですけれども。それで、欧米の価値観を基準としたこのハーグ条約とは相入れないんじゃないかという、そういうことをおっしゃる方も多いわけなんですけれども、この点について一体どうこたえていくのかということにつきまして、大臣の考え方を伺います。

国務大臣岸田文雄君) まず、国境を越えた人の往来が飛躍的に増加し、そして日本人の国際結婚及びその破綻も増加しております。こうしたことから、諸外国との間で子の連れ去り等をめぐる問題、顕在化しております。そうした中で、我が国だけG8諸国の中でハーグ条約締結しないという状況にあるわけですが、国境を越えた不法な子の連れ去りによる一番の被害者は子供自身であり、子の利益を保護するという見地からも、ハーグ条約を早期に締結すること、極めて重要だと考えております。
 そして、先ほどアジア諸国との関係を御指摘がありました。こうしたハーグ条約ですが、子の利益を保護するためにはやはり国際的なネットワークをしっかりと構築するということ、これが大変重要であります。アジア諸国においてはまだこのハーグ条約締結していない国がかなり多いわけですが、こうしたネットワーク構築ということを考えますときに、我が国としては、今後、子の連れ去り等をめぐる問題が生じる可能性が潜在的に高いと考えられるアジアの国々、こうした国々に対してしっかりと締結の重要性について協議を行っていく、働きかけを行っていく、こういった点は重要だと存じます。
 そして、あわせて、価値観の違いについて御指摘をいただきました。今申し上げましたように、ハーグ条約自体は子の利益を保護するという見地に立っております。このハーグ条約というのは、一方の親の都合によって不法に子が連れ去られることは、ある日突然に生活基盤が崩れ、他方の親との接触が切断され、異なる言語、異なる文化環境での生活を余儀なくされるといった有害な影響を子に与えるという認識に立っております。
 ですから、特定の国や地域の習慣とか文化あるいは価値観に立脚するものではないと考えられます。こうしたことですので、こうした考え方自身は国際社会で共有されていると考えております。よって、我が国の習慣、文化、価値観等になじまないということになるのではないかという心配は当たらないのではないかと考えます。

⇒岸田外務大臣(現・総理大臣)、よく理解されている。日本の共同親権制度の導入についても、強いリーダーシップを発揮していただきたい。

 

○末松信介君 調査室からいただいた資料では、条約に締結すべき意見例として積極的な意見と慎重な意見があって、そういう書き方をすると。日本人、そういう分析の仕方をよくするわけなんですけれども、今の大臣のお話は一応理解はしました。
 それで、二〇一一年の五月に、民法中の七百六十六条に離婚後の父母の面会交流は規定がされております、これにつきましては。それまでも、家庭裁判所も、実務で面会交流、子の監護に関する処分に位置付けましてこれを認めてきた実は経緯があるわけなんですよね。ある面では日本も共同親権的な思想は少し入ってきているということは確かなんですよ。だって、私の知り合いの子供さんが離婚しましたけれども、やっぱり、夏休みの間、何日か会って生活をしなさいと、それで、何週間に一回は必ず会いなさいということが協議離婚の中で条件がうたわれている、そういう話を私も聞いているわけなんですけれども。
 それで、いずれこのハーグ条約に加盟するということは、共同親権の問題とは一旦向き合う時期がやってくるんじゃないかという、そういうことを私は個人的には思っているんです。どうなるか分かりませんが。それで、他方、見方としては、離婚後、共同親権を認めるならば、これは簡単に離婚に踏み切ることはないという考え方もあることは確かなんですよね。異なった二つの見方が、確かにそのことが言われております。
 そのことは横に置いておきましても、私は慎重な意見の中で一番気になることを申し上げたいと思うんですが、先ほど風間委員も指摘をされました。それはどういうことかといいましたら、家庭内の暴力があって、ひどく命に危険があるということですね。そういったDV被害に遭っている方にとっては、もう時間の掛かる保護手続を待っていたら我が身が危ないと。とにかくその危険から自分の身を守らなきゃならないという、そのことで母国に帰ってきていると。子供は海外に置いておくわけにはいかないので連れて帰ってくるという、ある面でこれは言わば緊急避難的なやむを得ざる措置だと思うんですよね。
 それを簡単に、このハーグ条約ということで、まあ原則としては元の居住地国に戻さなきゃならぬわけですけれども、戻っているわけなんですけれども、割り切れるということ、簡単に割り切っていいのかどうかということ、見解の相違であるということで割り切っていいのか、私は少し考える余地がまだあるのかなということを思うんですけれども、岸田大臣の御見解を伺いたいと思います。担当局長でも結構ですよ。

 

○政府参考人(平松賢司君) お答え申し上げます。
 確かに、いわゆる家庭内暴力の件というのは非常に重要な問題だと承知しております。確かに、いわゆる自力救済と申しますか、やむを得ない事情の下に子供を連れ帰るという事態もあろうかと思いますけれども、もしそれが相手の親の監護の権利を侵害するというふうな形で行われる場合は、それはハーグ条約上の不法な連れ去りということにならざるを得ません。
 他方、事案によっては、今委員の御指摘のとおり、DV被害等によりやむを得ず我が国に子を連れ帰るという場合も確かにあろうかと思います。この場合は、相手国の相手の親の監護の権利を侵害したということであれば確かに不法な連れ去りには該当いたしますけれども、この中で、これも条約あるいは法律の中で定められておりますけれども、返還拒否事由というのがございます。それに認められると、そういう返還拒否事由であるということを認定されれば子を返還する義務はございません。
 条約実施法案におきましても、DV被害によりやむを得ず子を連れ帰ったというケースに関連いたしまして、かかる拒否事由の存否を判断する上で考慮すべき事由が規定されておりまして、こういった事由に基づきまして我が国の裁判手続においてこれが適切に配慮されるということになると思います。

⇒DV事案の場合、ハーグ条約では「返還拒否事由」がある。

 

○末松信介君 局長のおっしゃることは分かるんです。しかし、立証事由も当然、子供を連れてきた母が自分でこれ立証しなきゃいかぬわけですよね、こういうことがあったと。場合によっては、外国において日本のそういった大使館なりにも一応こういうことがありますということを伝達していくということで、極めて難しい作業をやっぱり求められているということは確かだと思うんです。
 それと、このハーグ子奪取条約が成立したときには、DVというのは余り想定されていなかったはずなんですよ。と同時に、子供を連れ去るのは父親であって、母親が連れ去るケースというのは余り想定されていなかったということはいろんな文献から明らかになっているわけなんで、そういう点も、私は、少しこのハーグ条約ということについては引き続きしっかり注視をしていくと、この条約加盟しましても、そのことを強く求めておきたいと思うんです。
 与えられた時間が大変短いので次に進みますけれども、この子の連れ去り問題にはいろんなケースがございます。これは調査室にいただいた資料、加地君が作ってくれた資料も見たら大変詳しく出ておるわけなんですけれども、私は、代表的な話を言いましたら、一昨年の原発事故を理由に、日本人と結婚した外国人が子供を連れて母国に帰るケースが出始めておるということなんです。日本は子供を連れ戻すのに有効なハーグ条約に加盟していないため、子供を奪われて途方に暮れている親がおられます。アメリカ人と結婚したある日本人の女性の話なんです。
 一昨年の三月に、夫が子供を連れて一か月の予定でアメリカへ里帰りしたと。その間に福島の原発の事故が起きてしまったと。それで、夫は原発事故の影響を恐れて、いまだアメリカを離れようとしていないんです。女性は帰国を促すと、子供を放射能の危険にさらすのかと拒んだそうなんです。アメリカでは、震災後、津波放射能のことが連日報道され続けました。夫は当初、原発の事故が安定したら戻ると約束していたんですけれども、その約束が守られることなく、昨年の十一月に一方的にアメリカで離婚を求める訴訟を起こされてしまったそうです。あの東日本大震災がなければ、今ごろは家族そろって幸せに暮らしていることだと思うんです。
 それで、女性はアメリカで安定した職を見付けられる保証はなくて、この状態で離婚となれば親権が認められる可能性も低いということを考えておられます。アメリカ政府の子供連れ去り窓口に相談しましても、日本はハーグ条約に加盟していません、子供を元の居住地に戻す義務はない、子供は保護の対象になりませんと。それと、アメリカで訴訟した場合、これもう何百万円という訴訟費用が掛かるということが一般的に言われております。それと同時に、ハーグ条約に加盟しましても、過去の事例には遡及されないということが明記されていますよね、条文にも書いているということなんですよ。
 それで、この女性は泣き寝入りをしたままなんですけれども、こういう連れ去り問題に対処できないのかどうかと。これはやはり、こういった問題をどう解決していくかということを、政府はすき間の問題をきちっとどう対処するかということを考えておかなければ、私は、ハーグ条約に加盟した加盟したということで手放しで喜べないと思うんですよ。
 ですから、この場合、二国間協定を結ぶとか、あるいは欧州評議会でも、こうした評議会をつくって話合いのできる場なんかを設けているはずなんですよ。多少私もこの関係する本を読みましたけど、そういうことを日本政府は考えていないのかどうか。このケースを想定して、この問題を解決するために日本政府は何ができるかということをお答えいただきたいと思うんです。担当の局長で結構です。

○政府参考人(平松賢司君) お答えいたします。
 委員御指摘のとおり、ハーグ条約の効力発生前においては、あるいは子の不法な連れ去り、留置に対しては条約の適用がないというのは御指摘のとおりでございます。したがいまして、今ある案件、既存案件についてハーグ条約をそのまま適用することはできないということは御理解いただきたいと思いますが、確かに今委員御指摘のように、いろいろ難しい案件、気の毒な案件があるということは我々十分把握あるいは認識しておりますので、そういったものについてもこれからも丁寧な対応をしていかなきゃいけないというふうに考えております。政府としても、これまでの国内法令等に従いまして、できるだけ可能な範囲で支援を行っていくということを考えております。
 今御指摘がございましたようなことで、例えば情報共有を目的とする二国間の連絡協議会というものも既にございますし、そういったものを通じた対応をする、あるいは、現行の制度、それぞれ国によってございますので、そういった制度を活用する、あるいは、親と子が会えない場合に領事が子と面会し、状況を確認する領事面会というのを外務省として支援するなど、いろんな可能な支援をやっていきたいというふうに思っております。
 今御指摘がございました二国間条約の締結でございますけれども、これは、主要国の例におきましても、二国間条約の締結によってハーグ条約の効力発生前の案件を処理するという例はございません。したがいまして、今のところ、今のような御指摘の遡及適用を認める二国間条約の締結ということは考えておりませんけれども、今私が申し上げたような幾つかの手段を通じまして、できるだけきめ細かい対応をしたいと思っております。
 更に申し上げれば、ハーグ条約発効前に発生した連れ去り事案に関しましても、いわゆる面会交流の権利が侵害されたという場合は、面会交流に関してハーグ条約に基づく支援を受けることは可能でございますので、そういった面会交流という手段を通じても、今ある案件についてできる限りの手当てをするということは可能ではないかというふうに考えてございます。

○末松信介君 一応、新たな制度設計をしなくても、既存の仕組みを使って丁寧に対応していって困った人を助けてあげると、こういうケースもそういう努力をしたいということだと思うんですけれども、私は代表的な事件としてこの問題を取り上げただけなんですけれども、もうこれ以上はお話し申し上げませんけれども、欧州評議会では、子の監護及び子の監護の回復に関する決定の承認及び執行に関する欧州条約ということで、締約国三十七か国が加入されているんですけれども、ここでもってもこうした問題は解決されるというか、ここの条約でもって解決されるわけじゃないんですね、それじゃ。ちょっと確認をさせてください。

○政府参考人(平松賢司君) あくまでも子の連れ去り事案につきましては国際的な約束としてハーグ条約がございますので、あくまでもハーグ条約の枠内で何ができるかということが国際的なルールではございます。
 他方、それぞれの個別案件について、それぞれの国ができるだけ丁寧な対応をするということは当然あろうかと思いますので、今私が申し上げたような形で、既存のいろんな仕組みを使いながらできるだけ丁寧に対応するということは今後とも努めてまいりたいというふうに考えております。

東日本大震災の時に、深刻な問題が起きていたことは知らなかった。ハーグ条約は加盟以前の事件に対して遡及適用できないが、政府は「きめ細かい対応をしたい」と答弁している。

【第183回国会】参議院法務委員会 第5号 平成25年5月9日

参議院法務委員会

共同親権」を取り上げた国会会議録を読んでみました。

 

登場人物:真山勇一 参議院議員みんなの党

     山田滝雄 外務大臣官房参事官

     谷垣禎一 法務大臣

 

真山勇一君 本当にこれからだというふうに思うんですけれども、ただ、これからだからこそ、あらかじめ、やはりこのハーグ条約が締結され、そして海外で国際結婚して不幸にしてトラブルがあったときは、いろいろどういうふうにしたらいいかということというのはある程度その情報があるとどれだけ安心できるかという面があると思うんです。ただ、まあ結婚ですから私は自己責任だと思うので、その辺というのは国がそれほどきめ細かく、先ほども申し上げたようにできることではない。
 そういう中でのおっしゃったような法システムの研究というのをしていっていただくということになると思うんですが、例えばアメリカなんかは結構もうその辺具体的にかなりいろいろ情報があるというふうに実は聞いていて、例えば日本へ向かって来る人にとっては、日本というのはこういうことだというような説明をしている部分があって、その中に大きな問題として共同親権あるいは単独親権というような話まで出ていて、日本はこうだよというような説明もあるというふうに聞いているんですけれども、日本ではこの辺りというのは具体的に説明すべきと考えていらっしゃるのかどうか、いかがでしょう。

○政府参考人(山田滝雄君) 外務省の方でしておりますのは、アメリカ側の法律についての調査は外務省でしております。これは、各州によって法律も違いますし。ですから、まず、私どもの領事館、大使館の領事それから領事以外の館員を含めてきちんと検証をさせて、現地の法律家の方々から意見を聞く、また支援団体の方々の協力をするといった体制を取っております。
 ただ、国内法の問題となりますと、これは法教育の問題となりますので、これは法務省の御所管ではないかというふうに考えます。

真山勇一君 そうですね。おっしゃるように、国内法の問題になってくると思うんですけれども、やはりアメリカ側から見ると日本は、日本の紹介のところには、日本は単独親権であるというような説明があるというふうに伺っているんですけれども。
 谷垣大臣にお伺いしたいんですけれども、日本政府としては、そうしますと、例えばハーグ条約締結して、この実施法案ということになりますけれども、その中で、共同親権それから単独親権というのがありますけれども、これは日本政府としてはどちらの方が望ましいというふうに考えていらっしゃるんでしょうか。

国務大臣谷垣禎一君) 現行の法律は、婚姻中は共同親権、そして離婚をした後はどちらかの親が単独で親権を取ると、こういう構成になっておりまして、私としては当然それでいくということでございます。
 ただ、平成二十三年に成立した民法等一部改正案、これは衆議院参議院それぞれの法務委員会で附帯決議を付けていただきまして、離婚後の共同親権制度の導入も含めた検討をせよということでございます。そこで、現在、この点に関していろいろな諸外国の制度を調査している最中でございまして、各国に照会を行ったりして、今基礎的な研究をしております。
 したがいまして、現行法は先ほど申し上げたとおりでございますが、この二十三年の法改正のときの附帯決議に基づく調査、これはまだ結論を出しているわけではございません。ただ、離婚後の共同親権制度の導入につきましては国民の間でもいろんな意見がある状況でございまして、実際にも、離婚に至った両親が、じゃ共同親権、海外で共同親権の場合があるわけですが、共同親権の場合に本当に、離婚した夫婦が子供のいろいろな育て方の方針で一致できないような場合もかなりあるわけですね。そうすると、かえって子供の順調な生育に障害があるというような例もあるわけでございまして、これは相当慎重に検討する必要があるのではないかと、このように思っております。

⇒父母双方で「共同監護策定計画」を策定すれば、意見の対立も解消できる。

 

真山勇一君 私自身の考えを申し上げますと、共同親権と単独親権ということでいえば、やはりアメリカは共同親権という考え方が強い、日本の場合は、今大臣から伺ったように、結婚中は共同親権ですけれども離婚した場合は単独親権になるというような考え方だと。私も、これはやはり長いそれぞれの国民の文化というのがありますので、一概に今すぐどちらがいいかって、こっちかこっちかどっちか選べというものではなくて、やはり文化というのは大事にしなくちゃいけないし、家族制度もあったと思うので、そういうものが時代によって少しずつ変質、変わってきて、その結果どちらがいいのかという選択になってくるんだろうというふうに思いますし、まだまだやはり、むしろ逆に言えば、ここでハーグ条約が締結されるから、じゃ共同親権だ、いや単独親権のままでいくというものではないというふうに私も思っております。
 私も、どちらもやはり、それぞれの国の事情ということも考えれば、いきなり決めるという問題ではないと思うんですけれども。ただ、大きな時代のやっぱり流れということになると、やはり子供を離婚した後も両方の親で面倒を見るのが一つの理想的な形だと思うんですけれども、実際にはいろんな障害があるけれども、その理想を追求するためのやはり一つの体制づくりということも言えるんではないかと思うんです。
 今、日本の法制度ではそうですけれども、谷垣大臣御自身は、やはり法律の専門家、弁護士さんということでもあったわけですから、その辺りで、一つハーグ条約ということを考えてくるとどうしても共同親権ということが避けられない問題になってくるわけなので、大臣御自身は共同親権についてどう思っていられるのか。
 実は、先日の衆議院の法務委員会で、共同親権について少し何となく消極的な答弁ではなかったかなというふうに、私はその議事録を見てそんな感じを受けるんですけれども、今のこの社会情勢の中で谷垣大臣御自身は、この共同親権、単独親権、そして今、日本の決まりということ辺りを踏まえてどういうふうにお考えか、お聞かせいただけると有り難いんですが。

国務大臣谷垣禎一君) 余り私個人の見解を申し上げる場ではないと思いますが、実はハーグ条約、この審議に臨むに当たりまして、私、学生時代の親族法の教科書、我妻栄先生のお書きになったものを引っ張り出して見ますと、もう古い本でございますから、共同親権なんてどこ探しても出てこないわけですね、離婚後の。それで、海外の例についても、当時の注釈民法なんというのをひっくり返してみても出てこないと。それで民事局長に、あのころは全然なかったのかなと。あのころというのはつまり昭和四十年か、四十年代のころですが、そのころは諸外国でも離婚後の共同親権というのは余りなかったようです。ところが、その後、アメリカでも御承知の、先ほどおっしゃったとおりですし、ヨーロッパでも、ヨーロッパというか、そのほかの国でもどんどん共同親権のところが増えていったと。それで、確かに一時の時代の流れはそういうふうに行ったんだと思います。
 ところが、共同親権といってみても、結局別れてしまった夫婦でどう実際に子供を育てていくかということになると、意見が合わないような場合がたくさん出てきて、現在は少しその反省が出てきている状況なのかなと。これは法務省の公的見解というわけではありません。私、この間、若干勉強してみますと、そんな感じを私自身は持っているところでございまして、ちょっと後ろ向きという、先ほど真山先生がおっしゃいましたが、そんなことを踏まえて実は衆議院の議論でも答弁をさせていただいたということでございます。

⇒どの国を指しているのかわからないが、現時点において、共同親権制度を導入した国が、単独親権制度に戻ったという実例はないことは、法務省民事局長が国会で答弁している。共同親権制度が世界の潮流である。

真山勇一君 そのくらいこの親権の問題、監護権の問題というのはやっぱり難しいし、先ほど大臣もおっしゃいました民法の七百六十六条、これにもこうした離婚の場合は子の利益を最も優先しなければならないものとすることというふうに書いてあるわけですね。やはり子供のことを考えなくてはいけないということなんですけれども、ただ、どうしてもその前に、子供の利益を優先する前にやはり離婚というとその当事者間、つまり夫婦の問題になってしまって、やはり子供のことを大事にはしているんだけれども、自分たちの事情も大事という、その辺が離婚のいろんな問題の難しいところがあるんじゃないかなというふうに思うんですけれども。
 子の立場から見た場合、その七百六十六条には子の利益を最も優先しなければということが書いてあるし、ハーグ条約のその一つの基本精神というのが、片方へ連れ去られてしまうということが子供の福祉にとって有害であるというようなことと、子の連れ去りによって子の監護権を獲得することは許されないというふうに精神は書いてあるわけなんですけれども。ただ、日本の場合はやはり裁判所で、例えば不幸にして別れた場合、面会交流などというものについては月に一回、そしてしかも監視付きで二時間のみというようなそういう日本の裁判所での判断というのが、判決が出ているわけですけれども、こういう辺りを見ると、やはり離婚で単独親権になった場合、やはり片っ方の子供を引き取っていない方の親というのは会いたいという気持ちがあるけれども、この辺りがどうしてもなかなか希望どおりいかない、制限されてしまうというその辺り、子供を一方の親から離してしまうような事態になってしまうということは果たして子の福祉にかなうことなのかどうか、この辺りの認識を伺わせてください。

国務大臣谷垣禎一君) 今、真山委員がおっしゃいましたように、一般的には両親が離婚してしまったと、その後であっても双方の親と接触を保ち、いろいろ愛情も受けて育っていくと。そういう意味で、平成二十三年の法改正で子の面会交流というのを考えて規定を作っていただいたわけですが、それが適切に行われるということが子の福祉の観点から見て望ましいというのは、私、そのとおりだと思います。だからこれを、離婚後の面会交流を促すことが平成二十三年の民法改正の目的であったんだと思いますね。
 それで、離婚後の面会交流がきちっと話合いでこうしようということになったのに執り行われないということになれば、それは子の利益の観点からこれまた問題になってくると、これは当然のことだろうと思います。ですから、法務省としては、この平成二十三年の趣旨に基づきまして面会交流の趣旨をきちっと広報していくということは引き続き行われなければならないと思います。
 ただ、後半におっしゃった問題ですね、日本の裁判所の、家庭裁判所の実務の問題。私は、巷間、何というんでしょうか、もう連れ去ってしまったらそういう事実状態を重んずるというようなことがしばしば言われたりするわけで、実は連れ去り勝ちみたいな表現もないわけではないと思います。
 今日は家裁も、家裁は来ておられないのか、しかし、家庭裁判所の実務を私、拝見しますと、それまで子を監護してきた者が連れ去って監護しているじゃないかと、今、それまで子を監護してきた者が誰かということだけを判断基準としているわけではなくて、その監護者が監護を開始するに至った経緯、無理やり連れてきたのかどうかとか、いろんなことがあると思います。そういう経緯、あるいは父母双方の子供に対する愛情、あるいは監護に対する熱意とかそういったもの、それから面会交流に対する姿勢、それからもちろん、当然、養育能力、居住環境、それから子の心情ということもあると思います。そういったことを私は総合的に判断して裁判所はやっておられるんじゃないかと。余り裁判所の判断に法務大臣がいいとか悪いとか言ってはいけませんが、私は、決して一つの要素だけでは判断されていないんではないかなという認識を持っております。

法務大臣自ら「連れ去り勝ち」という言葉を認めている。現在も続く社会問題である。法務大臣が、監護の判断基準では総合的に判断しているという認識を持っているのだから、家庭裁判所も監護の継続性だけではなく、総合的に判断してもらいたいものだ。

 

入学式に参加して

 

 

 今日4月7日は、全国各地で公立学校の入学式が行われたようですが、私も長男の小学校入学式に参加しました。

 

 調停では、当初、別居親である私が学校行事に参加することに対して、「来ても親の顔するな」と言われ、離婚もしていないのに、なぜそこまで言われるのかと非常に悔しい思いをしました。その後、「小学校の入学式は保護者2名まで参加できる」とのことで、今日、参加してきました。

 

 1年半前、妻は、早めの夏休みで実家に帰省したまま、自宅に帰ることなく、その後、長男は幼稚園に通うことができませんでした。夏休みが終わる段階で、妻がもう自宅に戻るする意思がないことを悟った私は、「自宅に戻ってくる気持ちがないなら、せめて子どもはそっち(妻の実家がある行政)で幼稚園に行かせてあげて」と提案しました。提案と言っても、心は断腸の思いでした。お友達もたくさんいたし、楽しく幼稚園に通えていたからです。

 

 その後も、いろいろあり、半年間ほど子どもは幼稚園に通えない時期が続きましたが、結果として、長男も次男も、妻の実家近くの幼稚園に通いはじめ、長女は保育園に通いはじめました。子どもたちが入園したことや幼稚園の状況について、妻が教えてくれることは一切ありませんが、子どもたちが、私に、片言な日本語で一生懸命、教えてくれました。子どもの適応能力は凄いなと感じています。

 

 今日、長男の入学式に参加して、断腸の思いだったけども、あの時の判断は間違っていなかったと思いました(決して、妻や実家の教育を肯定するつもりはありません)。当時、通園していた園長先生(女性)には本当に親身になって相談に乗ってくれて、「長男君は、今が絶好調の時だから、どこでもいいから幼稚園に行かせてあげた方がいい」とアドバイスをくれたことで、私も決断できました。本当に感謝しています。

 

 長男の要望で、入学式後、長男と二人で、大好きなお寿司を食べに行きました。私が5皿しか食べていないのに、長男は12皿も食べていて、驚きました。身長も伸びて、「もうすぐ、ドラえもん(身長129.3cm)と同じになる」と話していました。これから学校のことで困ったことがあったら、相談するんだよと言ったら、「うん、先生に相談する」と返答があり、大人になったなと感慨深くなりました。

 

 親子交流は、月1回5時間(当初は2時間)です。親子交流の頻度は多いに越したことはないし、多い方がいいに決まっています。その上で、今、置かれた状況の中で全力で子どもたちの心と向き合っていきたいと思います。

【第176回国会】衆議院法務委員会 第3号 平成22年10月29日

衆議院法務委員会

共同親権」を取り上げた国会会議録を読んでみました。

 

登場人物:橘秀徳 衆議院議員民主党

     馳浩  衆議院議員自民党

     柳田稔 法務大臣

     小川敏夫 法務副大臣

     小宮山洋子 厚生労働副大臣

 

○橘(秀)委員 おはようございます。民主党橘秀徳です。
 柳田法務大臣、小川法務副大臣、黒岩政務官、御就任おめでとうございます。そして、小宮山厚生労働副大臣におかれましては、御多忙中、御出席いただきまして、ありがとうございます。
 本日は、三点について、児童虐待の防止の問題、それから共同親権の問題について、さらに尖閣諸島の中国漁船衝突事案について御質問をさせていただきます。
 まず、冒頭であります。
 今、法制審議会の方で、部会で民法の親権規定の改正ということを審議されているところでありますが、中間試案が出されて、それにパブリックコメントを出されている段階であります。
 まず冒頭、柳田法務大臣に、こうした親権規定の改正を含めて、児童虐待防止に取り組む抱負あるいは意気込みについてお聞かせいただきたいと存じます。

 

○柳田国務大臣 おはようございます。
 児童虐待、このことは深刻な社会問題となっており、その防止に取り組むことは重要な課題であると私も考えております。来月は児童虐待防止月間にもなっておりますので、いろいろと法務省としても考えること、やるべきことはやっていかなければならないと思っております。
 その中でも、法務省としては、民法の親権制度の見直しについて検討を行っているところでありまして、引き続き、児童虐待防止のために積極的に取り組んでまいりたいと考えております。

 

○橘(秀)委員 ありがとうございます。
 防止月間ということで、先ほど柳田法務大臣はポケットからオレンジリボンを出されておりました。小宮山副大臣、つけておられます。私もぜひ購入してつけたいと思っております。
 これまで、多くの現場関係者の方々の努力で児童虐待防止対策は前に進んできたところでありました。一九九九年に民主党議員立法をつくっておりまして、このときに既に、親権の一部制限、停止について、特に小宮山先生を中心に前に進められてきたところでございました。やっと念願のこの親権の規定について、十年越しでこれがかなっていくということ、本当にうれしく思っているところでございます。それから、この問題については、超党派で、きょう質問に立たれる馳浩先生、それから公明党では池坊先生共産党さんと、党派を超えて多くの先輩議員たちが取り組まれて、子供の命と未来を守る児童虐待防止法をつくって改正を重ねてきたところであると思います。
 最近、報道各社さんについても、この問題、本当に真剣に取り組まれています。産経新聞さんの方では、江戸時代の日本の虐待の事例が出ていたり、さらに諸外国の法律の制度について事細かく今特集を組まれているところでございます。
 配付資料をごらんください。これは、朝日新聞毎日新聞のおとついの記事でございます。埼玉新聞児童虐待の問題をずっとやってこられた小宮純一さんという方が原作者で、余り名前を言ってどうかと思いますが、来週の週刊少年サンデーで連載が始まるというものでございます。主人公が若い児童福祉司の方で、その活躍を書かれて、実際に、この小宮さん、児童虐待の問題を本当に取材を尽くしてこられて、現場での実際の事件をもとに、今回の作品、フィクションではありますが、ノンフィクションにより近い作品だそうであります。これから子供たちを育てていく少年少女、特に中高生の皆さんが読者層なのでありますが、ぜひ皆さんごらんをいただければと思っております。
 なお、原作の小宮さんときのう電話でお話ししたんですが、小宮山洋子副大臣に実際に会われて、この連載について紹介させていただいたということでございました。小宮山副大臣の就任、大変喜んでおられて、物すごく期待をされておりました。その小宮山洋子副大臣にお伺いさせていただきます。
 平成二十三年度の予算、今、概算要求を各省出されているところで、児童虐待防止の関連予算については、社会的養護体制の充実に七億円の増額要求をされたということを伺いました。予算に児童虐待防止にかける思いをどう反映させていくのか、御答弁をいただきたいと存じます。

 

○小宮山副大臣 橘委員には、児童虐待に大変関心を持っていただいてありがとうございます。
 ずっと超党派でこの法律をつくり、改正をしたところでございますが、御質問にお答えいたしますと、児童虐待への対応など要保護児童対策の充実につきまして、平成二十三年度の概算要求では、今お話にあったように、前年より七億円増の八百四十八億円の要求を行っております。
 このうち、社会的養護体制の充実については、虐待を受けた児童等が入所する児童養護施設や里親などについて受け入れ児童数の拡大を図ること、また、児童養護施設等での小規模グループケアの推進児童家庭支援センターの箇所数の増加ということで百四カ所から百八カ所にいたします。また、心理療法担当職員の常勤化の推進などを盛り込んでおります。児童虐待の未然防止、早期発見、早期対応を図るためには、市町村や児童相談所の体制整備を図るなどの経費も必要で、これも盛り込んでおります。
 また、今年度の補正予算におきまして、安心こども基金の積み増し、延長をしておりますけれども、その中で、児童虐待防止対策、これまで十億だったんですけれども、百億にさせていただきまして、しっかり取り組みたいと思っているところです。
 御紹介いただいたように、来月は児童虐待防止月間で、私もここにオレンジリボンをつけておりますけれども、そのほかに、全国の児相につながる共通番号をつくっているんですね、ところが、その番号が余り知られていないので、これを知らせるためには、名刺大ぐらいのカードをつくって、NPOの方とかいろいろ関心を持っていらっしゃる方がたくさんいらっしゃるので、その方たちに使っていただくようにと私が提案いたしまして、月間の間にはそういうものをつくりますので、またお知り合いのグループなどで配っていただく方があれば教えていただきたいと思いますし、とにかく、番号がわかって、まずそれを通知してもらわないといけない。その後、児相の強化などでしっかり皆さんの御支援もいただいて、予算措置もしていきたい、そのように考えているところでございます。

○橘(秀)委員 どうもありがとうございました。
 本当に頑張っていただいて予算の拡充を図られている、施策も充実をしてきているところと思います。
 ただ、私、かつて松下政経塾というところの現地の研修で、児童養護施設や情緒障害児短期治療施設を回ってまいりました。心理療法士の方も、専門職の方がいらっしゃるんですが、実際は、人手が足りなくて、この方が料理を運ばれたり掃除をされたり、本当に現場はまだまだ人員も予算も足りていないところであります。
 毎日新聞さんの方の記事、終わりの方をごらんいただきたいんですが、児童相談所にしても、児童福祉司の方一人が抱えている案件が大体百件を超えているというまだ状況であります。児童養護施設にしても、先ほど申し上げたとおり、本当に人員、予算も足りないところでありますので、一層の拡充を求めたいと存じます。
 それでは、小川敏夫副大臣にお尋ねさせていただきます。
 法制審議会児童虐待防止関連親権制度部会における現在の進み方のことについて一点。それから、あわせて、部会の中間試案、児童虐待防止のための親権制度の見直しに関してパブリックコメントを行ったところでありますが、この概要について、また、国民や関係機関のコメントをどう生かしていくのか。特に、懸念をされる部分というのは、十八歳から十九歳の児童養護施設を退所されたような後、親権者がアパートを借りるのに同意をしないとか就職の際に同意をしてくれない、あるいは、児童養護施設を出た後に、十八歳、十九歳の子に実際に親がつきまとったり徘回をしたりということ、これが今回の法改正できちんと防げていけるのかということを多くの関係者の方から不安をいただいているところであります。あわせて御答弁いただきたいと存じます。

 

○小川副大臣 お答えします。
 本年八月、九月にパブリックコメントを募集しておりまして、そうした結果を受けまして、明年二月に答申を行って、そして来年の通常国会には法案を提出したい、そのようなことで臨んでおります。
 今御指摘の十八歳、十九歳の点につきましても、委員から御指摘いただいた点、私どもも問題意識を持っておりますので、適正に対応していきたいと思っております。

 

○橘(秀)委員 ありがとうございます。
 私は、審議会の形式ということで非常に質問がしづらいところではあるんですが、やはり関係者の方が懸念されているのは、どうしても審議会というと実際には法務省の民事局さんの方で事務方をされて取り回されていく、どうしても意向が反映をされていく傾向にあると思います。
 例えば、裁判所で実務が膨大で仕事がやりづらくなるとか、そうしたこと、こっちを優先するんじゃなくて、子供の命を守ることと権利を守ること、あと親権の制限については必要なところだけやれるような形で、親子の再統合も含めて、これをぜひ優先していただきたいというのがお願いであります。仮に裁判所のマンパワーが足りなければ、それは増員をしていく、あるいは配置がえをしていく、そうしたことを政治主導で行っていただきたいということを要望させていただきます。
 十一時から厚生労働委員会、小宮山先生、済みません、質問いたします。
 八月五日の参議院予算委員会で、辻泰弘委員の質問に、厚生労働大臣、法律の改正も含めてやらなければならないんじゃないかという答弁がありました。改正児童虐待防止法で、いわゆるかぎを壊して立ち入ることができる、これが可能になったわけでありますが、施行されてから、わずかに三件しかないという状況であります。
 長妻大臣の前向きな答弁から、大臣かわられましたが、これは継続をしていくのか、その方針についてお聞かせください。

 

○小宮山副大臣 児童虐待防止法の二回目の改正は、先ほどお話にあった馳議員などと一緒に私どもしたわけですが、そこで、児童虐待されているおそれがあれば裁判所の許可状を持って入れるように法整備はもう既にしてあるんですね。それが今回うまく使われなかったのは、運用上の問題ではないかというふうに考えております。
 この大阪の件につきましては、居住者の特定ができなかったなどの事例だったということから、裁判官の許可状を得て解錠などを可能とするような臨検、捜索を積極的に活用するべきではないか、そういう御指摘を辻議員からもいただきました。
 この大阪市の事件を受けまして、厚生労働省では、事件後すぐに、全国の児童相談所に、安全確認の徹底及び安全確認ができていない事例の確認及び再検討、これを指示いたしまして、また、安全確認の実施状況の調査や、安全確認が困難な状況での工夫事例の収集などを行い、対応を検討してまいりました。
 そして、八月二十六日付で、臨検、捜索などについて保護者等の氏名が特定できなくても可能であるということを全国の児童相談所に通知をし、また、九月三十日付で、安全確認の実施状況の調査結果を公表するとともに、臨検、捜索の実務が円滑に行われるよう、その実例も記載をいたしました「虐待通告のあった児童の安全確認の手引き」を作成いたしまして、全国の児相に配っているところでございます。
 こうした取り組みの中で、法改正はできているので、その運用がしにくい面をしっかりとフォローしていきたい、そのように考えております。

○橘(秀)委員 ぎりぎりまでありがとうございました。御退席をお願いいたします。ありがとうございました。

共同親権の質問は後回しにされ、その後、時間切れで具体的な質問はなかった。。

 

○馳委員 伴野副大臣、お帰りいただいて結構ですので。ありがとうございました。
 これは国際結婚だけの問題じゃないということは御理解いただいていると思います。と同時に、これは、私は法律の専門家ではないので僣越ではありますが、家裁における離婚の調停が長引く要件というのは、多分子供が絡んだ問題が一番多いと思うんですよ。小川さんもうなずきながら聞いておられますが。
 したがって、一定のルールを設ける、そして第三者、まさしく家裁あるいは調停するような機関、こういったものが入らないといつまででも解決していけない、その間にも子供はやはり成長する、このことを看過していてはいけない。だからこそ、我々はやはり国会議員として、議員立法というふうな形で、こういうのはいかがでしょうか、こういう論点はいかがでしょうかといったことをまさしく提示し続けていきたいと思いますし、最終的に皆さんの御意見がまとまれば、議員立法として委員長提案で提出できればベストだとも思っているんです。
 法務省は、多分、私どもの方に要請をいただく団体は、いわゆる共同親権を旗に掲げている方々も多くおられます。まさしく民法改正にかかわります。民法改正というと、私は十年間児童虐待の問題に取り組んでまいりましたから、親権の制限について、一時・一部制限の問題についてようやく動き始めて、来年にも方針が示されることになっているということも存じております。それほど、五年、十年かかる問題だということをわかっているがゆえに、我々が議員立法として、まさしく国民生活にかかわる大きな問題になっているということの認識を、まず政務三役の皆さんには御理解をいただきたいということです。
 この問題については、ここでひとまずおいておいて。

⇒馳議員はいつも熱心に質問してくれていた。「国民生活にかかわる大きな問題になっている」と指摘。その通り。

二宮周平著「18歳から考える家族と法」

二宮周平

 家族法の第一人者で、立命館大学教授の二宮周平氏の著作「18歳から考える家族と法」を紹介したい。皆さんも是非、読んで見てください。

 

 (はしがき)

 人に問題を解決してもらうのではなく、人に相談しながらでもいいですから、自分で考え、自分で解決に向かって進んでいく力を身につけてほしいと思います。そのためにたくさん知ってください。「知は力なり」と言います。

 

 一人で抱え込まずに、法律的なことは弁護士に、心身の体調は医者やカウンセラーに相談していくことは必須です。自分で抱え込むほど、しんどくなります。その上で、体調が回復してきたら、いろいろ勉強したり、当事者同士で情報交換すると、自分が置かれている状況を客観的に見ることができます。

 

(単独親権の問題点)

調停や審判になった場合には、お互いの監護能力の優劣を争う、そのために過去の言動を事細かに指摘して相手方の人格をおとしめる、さらには実力行使で子を連れ去るといった事態を招くことがある。親権者になれないと、子と会うことができなくなるのではないかという不安が親権争いをより激化させる。

 

 私もこの1年半の間に離婚裁判と調停4つを抱えていました。今も係属中のものもあります。病気になり、配偶者からの調停や裁判の一方的な請求を受け、家裁で事実経過を話しても、取り合ってもらえず、理不尽な思いをしてきました。

 

 「親権争いが激化する」ことで、さらに心身が消耗します。私も今振り返ってみると、相手弁から悪い印象を植え付ける主張をされ、散々な目に遭ってきたことは事実ですが、不毛な論争だったと思うところもあります。

 

共同親権へ向けて)

親権を巡って父母が対立し、勝ち負けを決める場から、父母が離婚後の子の生活をいかに支えるかの方策を見出す場離婚後の親子関係の形成へ向けて父母が調整する場への転換である。

 

 「勝ち負けを決める場」から、子どもの視点に立ち、「父母の離婚後の子の生活をいかに支えていくか考える場」にしていく必要があることを知りました。

 

 そのためには、「原則共同親権制度」を導入し、親権争いをなくし、子どもの利益を最優先にしていく必要があります。共同親権制度を導入すれば、養育費の不払いも解消し、別居親と子どもの親子交流も多くでき、子どもの健やかな成長が可能になります。子どもの貧困問題や一人親家庭の貧困も、自分たちで解消することができます。

 

 1日でも早く「共同親権制度」が導入されることを願っています。

【第183回国会】衆議院法務委員会 第2号 平成25年3月15日

衆議院法務委員会

共同親権」を取り上げた国会会議録を読んでみました。

 

登場人物:椎名毅 衆議院議員みんなの党

     谷垣禎一 法務大臣

 

○椎名委員 今、局長がおっしゃっていただいたように、家庭裁判所で子の監護権なり引き戻しなりの手続がありますということですけれども、要は、私のところに相談に来ている人たちは、その家裁が信用できぬと言っているわけでございます。
 この問題の背景にある考え方としては、家裁の実務の運用として、母親優先の考え方だったり、先ほど申し上げた継続性の尊重といった実務的な運用があると同時に、民法上の単独親権という考え方、これがあるというふうに思っています。
 ハーグ条約自体は、原則として、当該国の共同親権主義か単独親権主義かという考え方については、基本的に自由でございます。どちらでも構わないという考え方をしております。したがって、原則的に、ハーグ条約を締結するに当たって、日本の民法に定められている単独親権主義という考え方、これを見直す必要があるわけではないんだと思います。
 しかし、先ほど申し上げたように、ハーグ条約を締結すると、結局国内の中で、差別、俺らは保護されないみたいな、そういう異論、不平不満が出てくるんじゃないかというような話を申し上げたわけでございますけれども、早晩、この親権のあり方だとかを見直していく必要があるのではないかというふうに考えている次第でございます。
 共同親権主義という考え方をとると、結局、父親と母親相互が親権を行使することができます。それに伴って、何日かずつ面倒を見るという形になっています。アメリカなんかではツーツーファイブという考え方があるらしいですけれども、一週間七日のうちの二日はお父さん、二日はお母さん、残りの五日は、隔週でお父さん、お母さんみたいな形ですね。そうすると、この週は二日、五日でお父さん、次の週は二日、五日でお母さんみたいな、そういう面倒の見方をやっている州なんかもあるやに仄聞しております。
 そういった中で、要するに、日本の家族制度、親権のあり方、こういったことについて検討していくことが必要ではなかろうかというふうに思っております。仮に、親権について検討しなかったとしても、共同して監護をするというような、年間百日程度の面会交流を認めていくなどの実務運用で解消していく。
 この実務運用という話なんですけれども、私のところに話に来ている人が、家裁は信用ならぬと言っているわけです。それは、結局、家事審判の運用がなっとらんという話なんですけれども。だとすると、結局、家裁はどうすると従うのかというと、立法的な解決をすると、家裁は面会交流などを認めていくという対応にしていけるのではないかなというふうに考えていて、これを立法的に解決していくという発想もあるのではないかなということを思っております。
 ここまで事務方の皆様とお話をさせていただいたわけですけれども、ここまで来て、谷垣大臣の御見解をようやく伺いたいと思います。

⇒椎名議員の指摘はその通り。立法不作為を解消すれば、家裁の運用も変わる。

 

○谷垣国務大臣 今、椎名議員の発言を伺っておりまして、確かに、日本の国内でも、離婚して子供をどうするか悩んでおられる方はたくさんいらっしゃる。ひょっとしたら、椎名さんのところに行っておられる方と私のところに見える方は共通の方じゃないかと思うぐらい、私が伺ったのと同じことをおっしゃっておりました。
 それで、共同親権ですが、確かに日本の民法は、親権は単独、母親か父親にするか、どっちかに決めなきゃいけない。もちろん、変えることはできますが、どっちかに決める。むしろ外国では共同親権の国が多いというのは、私もそのように認識しております。
 そこで、ただ、私は余り、このごろ法律の実務から離れておりますが、私の解釈論が正しいかどうかわかりませんが、では、今おっしゃった、子供に対して会う時間といいますか、一緒に暮らす時間と申しますか、それが親権の存在とパラレルなのかどうかというのは、それはちょっと違うかもしれないと私は思います。
 それからもう一つ、親権ということになりますと、共同親権で、お父さんとお母さんが子供のいろいろな育て方に関して意見が一致すれば共同親権というのはいいですが、果たして意見が一致するんだろうか。つまり、諸外国で共同親権でうまくいっているんだろうか。これは、別れた後、さっきいみじくも椎名さんがおっしゃった、別れたらもう、要するに、一人の男と一人の女がいて、あとは子供との関係は切れないんだと。昔、恨みっこなしに別れましょうねという歌がございましたけれども、そういうふうになれば、多分、共同親権でも非常にうまくいくんだと思うんですね。ところが、私が知っている離婚の例でいくと、必ずしも、なかなかそうはいかない。そうすると、共同親権でうまくいくのかどうか。そのあたりもいろいろまだ議論があるのではないか。
 まだ私の認識はその程度のところでございまして、これ以上はちょっとまだ申し上げるだけの自信がございません。


○椎名委員 どうもありがとうございます。ぜひ御検討いただければと思います。
 あとは、事務方の皆様方に、いろいろ質問を準備して、いろいろ御対応していただきましたが、ごめんなさい。

⇒谷垣氏は消極的

【第177回国会】衆議院予算委員会 第28号 平成23年8月8日

共同親権」を取り上げた国会会議録を読んでみました。

 

登場人物:馳浩 衆議院議員自民党

     中井洽 予算委員長

     江田五月 法務大臣

 

○馳委員 松本大臣、結構です。
 よく外務省、法務省、すり合わせをして、特にこの問題についてはスイスの国内法が極めて丁寧に整備をされておりますので、参考にしてください。
 ところで、国際離婚の話をいたしましたが、国内の離婚においても、無断で子供を連れ去るという事案、そして、その後一切別居している親に会わせないという事案が極めて多く散見をされ、実はこれ、隠れた社会問題になっております。
 この国会で民法の改正もなされましたが、江田大臣、私と随分と、法務委員会で三時間以上この議論をさせていただきました。いわゆる、離婚をしたら男と女、離婚をしてもお父さんとお母さんは変わらないじゃないかと。子の福祉を最善に考えた場合に、離婚後の面会交流、これは法的にも明確なルールを準備しておかなければいけないし、あるいは、恐らく養育費の問題もこれは出てくるんですよね。
 私は、これについてはやはり法務省も、家裁の事案とかいっぱい挙がっていると思いますが、離婚をした後の面会交流権、私はあえてはっきり言います、面会交流の必要性については今回の民法改正の第七百六十六条で明文化をされましたが、もう一歩、さらに踏み込む必要があるのではないかと思っております。
 これは、突き詰めれば、離婚をした後に単独親権かあるいは共同親権かという話に入りますが、その一歩手前として、お父さんもお母さんも共同して養育をする親としての責任がありますよ、このことを明確にしていく必要があり、それが面会交流という形として担保されるべきだと私はずっと考えて、大臣とも法務委員会で長らく議論させていただきました。大臣の見解をお願いいたします。

 

○中井委員長 きょうの集中審議は、外交・安保等になっています。この一問に限って、国内問題ですが、許します。

 

○江田国務大臣 委員長の采配で等の中に入れていただいて答弁をさせていただくということになりました。簡単にしたいと思いますが。
 かつては、離婚をした場合に、子供を育てていくのに、お父さんとお母さんと二つ子育ての原理があったんじゃ子供が混乱するだろう、したがって、これは単独親権にした方がいいというので今日までやってまいりました。しかし、お父さんとお母さん、別れた後の子供との関係、あるいは別れた二人の関係というのもさまざまなものが今出てきておりまして、昔の関係だけでは律し切れないものがいろいろ出てくるだろうというので、今議論になっているわけです。
 ところが、一方で今度は、お父さんからお母さんに対する暴力で、お母さんが離婚で逃げて子供と一緒にどこかに隠れているというような場合もあるので、この場合に全部その情報が外へ伝わっていくというのは、これは避けねばならないというようなこともございます。
 そのようなことをいろいろ考えて、まさに委員ともいろいろな議論をいたしましたが、ことしの民法の改正で、離婚をした場合の子の監護、これも子の福祉が第一ですよ、こういうことを、これはもう今までも当然ではあったんですが、やはり書き加えようということで書かせていただいたわけであります。
 離婚後も子供にとってはお父さん、お母さん、これがそれぞれいるというのは当たり前でありまして、子供にとって、子の福祉にとって、お母さんとの面会交流、これは、お母さんが監護をしている場合にはお母さんが日常的にそれをやるわけですが、監護をしていないお父さんとの面会交流もやはりあった方が子の福祉に資するという場合があるだろうということで、とにかく話をしてください、話がつかなければ、家庭裁判所がそこは間に入りましょうというような法制度に今しているわけでございまして、これがきっちり世の中に定着をして、子の福祉が前進することを私どもは望んでおります。

 

○馳委員 法務大臣をお務めになった中井さんも、この話はよく御存じだと思います。私は、離婚をした後、子供の立場に立った法的な整備の必要性、いわゆる面会交流を担保するんだよ、もちろん養育費もちゃんと払いなさい、こういう議論について早く整備をしていくべきだと思います。